このページは富士市境で2人3脚(認知症対応グループホーム・小規模多機能型居宅介護・サービス付高齢者向け住宅など)を運営されている愛心援助サービス株式会社の石田友子ホーム長のご協力・許可により掲載しています。
石田友子氏は、「認知症コールセンター相談員」「認知症と家族の会・すぎなの会」など、認知症に関わる様々な活動をされていらっし ゃいます。
2人3脚ホームページ http://care-net.biz/22/ni2n3kyaku/
石田友子ホーム長
教えて ホーム長 Q&A | ||
項 目 別 |
症 状 | 食事に関するお悩み……………………………………………Q07・Q19・Q54・Q68 排泄に関するお悩み……………………………………………Q12・Q27・Q31・Q76・Q79 物忘れ(妄想)に関するお悩み………………………………Q06・Q08・Q11・Q23・Q67・Q74 同じ事を聞く(独語)に関するお悩み………………………Q04・Q35・Q40・Q74 暴言・暴力・破壊に関するお悩み……………………………Q10・Q34・Q53 生活(着替え・歯磨き )に関するお悩み………………………Q20・Q46 コミュニケーションに関するお悩み…………………………Q21・Q55・Q71 収集癖に関するお悩み…………………………………………Q30・Q32 車の運転に関するお悩み………………………………………Q05・Q80 入浴に関するお悩み……………………………………………Q13 睡眠に関するお悩み……………………………………………Q18 徘徊に関するお悩み……………………………………………Q49 落ち着きがない…………………………………………………Q43 火の始末に関するお悩み………………………………………Q56 |
介 護 | 家族の気持ちに関するお悩み…………………………………Q01・Q09・Q47 遠方の介護に関するお悩み……………………………………Q02 仕事と介護に関するお悩み……………………………………Q03・Q36・Q54 介護の方法等に関するお悩み…………………………………Q14・Q25・Q28・Q65 認知症という病気(種類)について…………………………Q15・Q22・Q37・Q44・Q52・Q77 予防(早期発見)について……………………………………Q26・Q78 専門医(検査)について………………………………………Q24・Q42・Q45・Q72・Q73 手続き・連絡に関して…………………………………………Q29・Q39・Q51 施設について……………………………………………………Q41・Q61 相談する場所について…………………………………………Q16 |
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その他 | 本人へ伝える……………………………………………………Q48 アルコール………………………………………………………Q57 性的なお悩み……………………………………………………Q58 受診を拒む………………………………………………………Q59 薬を飲まない……………………………………………………Q64 感染症……………………………………………………………Q70 |
A:認知症は病気です。認知症になっても本人にできることはたくさんあります。認知症という病気を理解するよう勤めてください。
原因となる病気によって、受け止め方は様々ですが、もっとも難しいのは進行性の認知症であるアルツハイマー病だそうです。同じアル ツハイマー病でも80歳以上の高齢者では、ゆっくり進行しますが、今までの関わりから40代50代の若年性の場合は進み方が早い傾向に
あるようです。認知症になると、物忘れが多くなるだけでなく、それまでできていたことが少しずつできなくなったり、家族の顔がわか りにくくなったりします。しかし、認知症がかなり進行した人にも、できることはあります。何より人としての感情は残っています。今
までとは異なる言動は、すべて病気のせいであると理解して対応するほうが、家族にとってもはるかに楽だと思います。時間はかかるか もしれませんが、その人の人格を尊重しながら肯定的に関わるとよいと思います。(目次に戻る)
A:認知症でも軽度のうちなら一人暮らしはできます。できるだけ医師と連携を図りましょう。専門の医師にかかっていなければ主治医から認知症を診てくれる医師を紹介してもらいましょう。診断した医師から説明をよく聞きましょう。(インホームドコンセント)その上で、地域でどんな介護保険サービスを利用できるか調べ、利用手続きをしましょう。
別居する子どもができることとして遠距離介護があります。定期的に親の様子を見に行ったり短期間一緒に生活し世話をしてみて、どの程度認知症が進行しているか把握しましょう。しかし、認知症が進むとそれも難しくなります。いやおうなく同居をするかどうか、選択を迫られることが多くなります。
認知症の人の場合、できるだけ住み慣れた環境で、なじみの人や物に囲まれて暮らすことが、認知症の症状の悪化をくいとめるのに役立ちます。
近くに住む親戚や近隣の人達の協力が得られないか頼んでみるのもよいでしょう。介護保険のサービスの利用にはケアマネージャーが関わります」。一人暮らしの親のことを詳細に伝えましょう。現在抱えている悩み問題を遠慮なく相談してください。(目次に戻る)
A:働きながら認知症の親を介護することはとても難しいことです。しかし、介護保険の各種サービスを上手に利用できれば自宅で一緒に生活を続けることができます。介護保険のサービス、小規模多機能型居宅介護はお勤めをされている家族の強い見方でもあります。
最近、働きながら認知症の人(親)にの介護をしている人が増えています。多くの場合自分自身のためや家族の生活のために仕事をやめるわけにはいかない現実があります。仕事をしながら介護するには、出勤前に昼食を準備したり、外出して行方不明になると困るからと家の中からは開かないように出入り口に鍵をかけたりします。拘束をせざるをえない状況となります。日中は電話で様子を確認し、親が電話に出られない場合は、近隣の人に安否を問い合わせる人もいます。夜間にせん妄等で寝ない場合は、最悪な事態となり、介護者は疲労が蓄積し、ストレスがたまり病気の要因となりかねません。小規模多機能型居宅介護は、そんなご家族を応援します。24時間のサービスですので、安否確認に自宅へ訪問することも可能です。また、出勤前に朝早く、事業所に送りとどけけたり、勤めの帰り迎えに来ていただくことも可能です。日中は送迎をいたします。臨機応変にプランの変更をケアマネージャーさんと協議し決定することができます。。利用者さんやご家族にとって使いやすい介護保険サービスです。地域密着型のサービスですので、家族同士で相談しお試しを利用して、本人が気に入っていただけたら利用を開始することもできます。仕事をしながら一人で認知症の人(親)をみることは容易ではありません仕事をやめるか施設へ入ってもらうかの選択を強いられることもあります。また、長期の介護疲れから、虐待なども起こりかねません。そうならないように、周囲の人達(家族、親戚、近隣の人達、介護職等)の理解と協力を得られるようにしましょう。(目次に戻る)
A:認知症の人(親)が何度も何度も同じ質問をすることが多く、質問される家族は、ストレスが溜まり疲労困ぱいしてしまいます。そんなときは話をそらすか、その場から逃げるしかないかもしれません。私はそんなとき、少し深呼吸を繰り返し心を落ち着かせます。今初めて聞いたフリをします。
認知症の症状は、新しいことや、直前にしたこと、言ったことなどを忘れる物忘れが基本です。そのため話した内容だけでなく、話しをしたこと自体忘れてしまいます。1日に何度となく同じ質問を繰り返します。「これで10回目よ、やめてくれない」と言いたくなります。質問内容は自分にとって大切な事柄が多いようです。私もよく息子に言われます。「さっき聞いた」「まえに同じことを聞いた」と、本人は言った覚えがないのです。初めて聞いたつもりで対応すればよいのですが、回数が増えてくると、耐え難くなるかもしれません。
このようなことへの対処法は、一概には言えませんが話題を変えて話をする。たとえば、「この前親戚の○○さんが来てね、お野菜をくれたのよ。今日はその野菜で料理をつくるけれど何のメニューがいいですか」などうまく話題をそらす方法があります。あるいは認知症の人のいる場から離れて、気持ちを落ち着かせるのもいいですね。ほかの家族に対応を変わってもらうのもよいでしょう。1週間に何度かデイサービスを利用してもらいイライラすることのない時間を作るのもよいかもしれません。(目次に戻る)
A:認知症の人の運転は危険なことが多く、自分だけでなく他人の生命を奪う恐れすらあります。しかし、認知症の人は自分の運転が危険であるという自覚がなく、運転をやめさせようとしても聞いてくれないことが多いのです。
認知症の人の運転が全て危険というわけではありませんが、横断歩道を渡る人に気付かない、右折や左折をするタイミングがずれてしまったり、ブレーキを踏むのが遅れる、信号無視、高速道路での標識をみおとしてしまい逆そうしてしまう、車庫入れが上手くいかずに壁など壊してしまうなど、様々な危険があります。最悪の場合、関係ない人の命を奪うことにもなるのです。
自分の運転が危険だと思って、自分から運転をやめる認知症の人もいますが、自覚がなく安全と思い込んで危険な運転を続ける人もいます。その場合、まずは家族が一緒に乗ってみて危険性を確認してみてください。それを根拠に認知症の人に話をして納得してもらい、運転をやめてもらうようにします。
それでも効果がなければ、鍵を隠したり、(合鍵を作ってしまうケースもありますが・・・)バッテリーを外すなど、運転が出来ないようにしてみます。自動車修理工場の業者を呼んで修理させ運転を再開する人もなかにはいます。
「道路交通法」では、認知症の人は運転免許の更新が出来なくなるので、地元の警察署に相談してみるのもよいでしょう。公文書で運転が禁止されれば、認知症の人も納得するかもしれません。しかし、運転が禁止されたこと自体を忘れて運転してしまう人もいて、ご家族は大変対策に苦慮されているようです。デイーサービスに通ったりと、運転以外の楽しみを見つけていきましょう!(目次に戻る)
A:預金通帳や財布のしまった場所を頻繁に忘れるようなら、家族が預かっておきましょう。その際預り証のようなものを書き本人に手渡してみましょう。また、一番身近に介護してくれる方を泥棒扱いしたりすると、家族はとても疲弊してしまいます。頼りにしているからこそ自分が忘れたことの責任をなすりつけるのです。見つけたら一緒に探し、本人が見つけられるようにしむけるのも対策の1つです。
認知症の症状が進行すると、食べ物とお金に対する執着が強くなります。具体的なものに関心が高まるため、特にお金のことは気になるようです。現金、預金通帳、株券、年金証書など常に持ち歩く人もいれば、盗まれては困るとタンスの奥やカーペットの下、冷蔵庫の中などに隠すことが多々あります。しかし、しまった場所を忘れるばかりか、隠したこと自体忘れてしまうため、本人はなくなったと、大騒ぎして自分の部屋だけでなく夜間に家中探し回ります。孫の部屋まで探しに入り、あげくのはて「盗ったでしょう」「盗っただろう」といわれ、孫との関係が悪化することもあります。また、離れて暮らす子どもに電話をかけ「嫁が通帳を持っていった」と避難することがあります。中心になって介護している身近な人が疑われます。これが認知症の症状の1つでもある「物盗られ妄想」です。探すときのポイントは叱らずに、本人と一緒になって探す。見つけたら本人に発見しやすい場所において発見させるようにしましょう。その際一緒に、見つかったことを喜びましょう。物盗られ妄想は認知症が軽度でも起こる難しい症状です。(目次に戻る)
A:高齢者や認知症の人は、食べることに対して十分な注意が必要です。食べやすく料理を刻んだり、飲み込みやすくするために料理に工夫をして出すようにしましょう。味噌汁やスープ、お茶などの飲み物にとろみをつけたり、ゼリー状にするとむせにくく、嚥下しやすくなります。
認知症でなくても高齢になると食事中にむせたり、食べ物をのどに詰まらせたりします。これが原因で肺炎(誤嚥性肺炎)をおこしたり、窒息して死亡する危険さえあります。家族は食べるときの姿勢に工夫をしたり、食事時の様子に十分注意が必要です。
人間には、口の中の固形物や液体を自然に食道へ送る仕組みがあります。口の中、特に舌の奥にものがあるとのどの筋肉は巧妙に動いて食道の入り口に送ります。同時に気管に食べ物が入らないように、ふたがされます。
また、しっかり噛むことも大切です。唾液の分泌がよくなると舌の奥に食べ物を送るのに役立ちます。義歯がしっかり合っていることも大切です。口腔ケアーをしっかりすることも必要です。口腔体操は誤嚥の予防になります。(静岡県歯科医師会にお問い合わせ下さい)
高齢になると上記の仕組みがうまく機能しなくなり食べたものの一部が気管に入り、その反射として咳き込んだり、むせたりします。最悪の場合は食べたもので気管がふさがれ、窒息することがあります。認知症の人は判断ができないため、誤嚥が多いのです。
このため食事のときは、様々な工夫や見守り、注意が必要になります。食べ物は硬すぎたり大きすぎると細かく噛み切れず、丸飲みしてのどに詰まらせやすくなります。細かく刻んだり、少なめに分けて口に入れるようにしましょう。また、水のようにさらさらした液体はのどの粘膜の刺激が弱く、のどの反射にあまりよくありませんので、トロミなどを使いましょう。粉ゼラチンでゼリー状にしてもむせずに食べることができます。(目次に戻る)
A:認知症が進行したら、家族の顔もよくわからなくなります。そんな時私はあなたの妻です、(夫です)あなたの子どもです、と話してみましょう。一時的に記憶が戻るときがあります。ただし、あまりしつこく聞くのは避けましょう。本人のプライドが傷つかないように配慮しましょう。
軽度の認知症では、新しいことを忘れても、古いことはよく覚えているものですが、重度になると、古い記憶まで忘れてしまいます。古い記憶の1つが家族です。アルツハイマー病のような進行性の認知症や、重度の脳血管性認知症では別居しているおこさんの顔をわからなくなることがしばしば起こります。その前の段階では、顔はわかっても名前を忘れてしまう時期があります。家族は強い衝撃を受けることでしょう。長年生活を共にしてきた家族の顔がわからなくなることは、家族にとって辛く寂しいことですす。私たち2人3脚では皆が(スタッフ及び利用者)家族の一員としてしてとらえ、利用者さんと接するよう心掛けています。家族ではありませんが少しでも家族に近い”愛情”を!と接するよう努めています。家族は忘れたことを思い出させようと懸命に説明を試み家族であることを思い出させようとしますが、何度も何度も同じことを指摘されると混乱します。忘れてしまったことの自分を責め、さらに混乱をするのです。
しかし、認知症の人にも心(感情や感性)は残っています。大切なのは心の安定で、家族のことはわからなくても、本人のことをよく理解し心配してくれ、よく世話をやいてくれる人がそばにいることによって安心されます。
家族としては、考え方を切り替えることは難しいかもしれませんが、「親しい人」のふりをしながら、思いやりのある言葉を掛け、認知症の人の好きな食べ物を用意したり、若いころの時代の話を聴いたり穏やかに和める雰囲気をつくる工夫が大切です。(目次に戻る)
A:相談してくれて有難う。あなたは今外へ目を開いてくれました。どうかあなたの苦しみを私にお話ください。”家族にも十分なケアを”と思っている一人です。
どうか一人で介護を抱え込まないでください。同じような悩みを抱えながら、介護を乗り越えている人達を、私はたくさん知っています。近所の人や知り合いに、どうか一声かけてみてください。話せる仲間がきっと見つかるはずです。(目次に戻る)
A:認知症の人は、幻覚や妄想による恐怖感から、大声を上げることがあります。薬が有効な場合もあります。また、物忘れに対して恐怖感や不安感が抑え切れずに突然大声を上げる時があります。対応のしかたで落ち着く場合があります。
認知症の1つとして幻覚や妄想があります。それが原因で興奮したり大声を出したりします。
幻覚とは、他の人には見えないものがみえたり、(幻視)聞こえないものが聞こえたり(幻聴)することです。たとえば「玄関に人が立っている」とか「2階から誰かが呼んでいる」と言い張ることがあります。
妄想は、現実にありえないことを現実だと思うことです。「誰かが襲ってくる」と言ったり、姿が見えない人と話したりするのは妄想からくるものです。すでに亡くなっている母親に会いに、実家に帰ろうとすることがあります。これは認知症の人にみられる「昔に生きる」という状態ですが、ありえないことを現実だと思い込む妄想の一種です。2人3脚ではよくみかける光景です。
実際に起こっていないことでも、認知症の人にとって現実のように感じられます。けして否定したり説得してはいけません。本人の言うことをゆったりとした気持で受容しながら聴きます。「それは困りましたね。どうしましょうか?」と支えるような態度で接します。家族の応援をかりて電話で気分を転換することもあります。「誰かが襲ってくる」という場合は、「ちょっと見てきます」探すふりをして怪しい人がいないことを話します。本人を安心させる工夫をしましょう。幻視で実際みえないものが見えている場合は「私にはよくみえませんが・・・・・」遠まわしに否定してみましょう。不安が取れるかもしれません。
認知症の人が大声を上げる理由は、こうした幻覚や妄想だけではありません。認知症の人自身にもよくわからない不安や恐怖感を抑えきれずに大声を出してしまうことがあります。”あなたの不安感をよくわかっていますよ”という気持で関わると安心されるようです。(目次に戻る)
A:認知症の方は低下していない機能と低下している機能が混在しています。すべての機能が低下しているわけではありません。このように部分的に機能が低下する状態をまだら認知症と呼びます。
認知症の方は、最近聞いたことはすぐに忘れますが、若いころ聞いた話は良く覚えており、よく楽しそうに話してくれます。尿失禁されていても手続き記憶でしっかりできるものがあります。野菜切りやアイロンがけ、洗濯物たたみ等上手にできる方がいます。このように認知症の方ができる機能とできない機能が混在しています。(まだら認知症)脳血管性認知症の場合脳梗塞により大脳の一部がダメージを受けるため、低下した機能と低下していない機能が混在していることが多いのです。
アルツハイマー型認知症の場合は大脳の機能が全体に低下しますが、初期の段階では大脳の機能低下は一部分に限定されるためまだら認知症が出やすくなっています。
介護する上で大切なのは、低下した機能を見るのではなく、低下していない機能に目を向けることです。(目次に戻る)
A:認知症の方は感情が豊かに残っています。見つかったら恥ずかしいという気持ちがあるので、タンスの奥のほうに隠します。
汚れた下着を見つけたらついつい叱ってしまいますが、何故叱られたかということより、叱った人の顔の怖さや声のトーンの大きさに驚き嫌なイメージだけが残ってしまいます。
それよりもそっと片付けておくほうが良いでしょう。
物忘れなど認知障害があっても、人としての喜怒哀楽といった感情、思い、期待、プライドは残っているものです。認知症のために排泄を失敗したり、また、尿漏れを防ぐために陰部にトイレットペーパーーを沢山はさむ光景を目にします。汚した下着を家族に見つかるのは恥ずかしいという思いがあります。「汚した下着をカゴに入れてください!」と、叱ったり説教するのはやめましょう。
認知症の方はしまったこと自体忘れてしまいますから、覚えのないことで避難されることは理不尽に感じます。また覚えがあっても、自分の失敗を認めたくなくって、不愉快な気持ちになってしまうからです。家族は本人にわからないように回収して洗濯し、そっと戻しておけばいいことです。
こうした行動は軽度の認知症のときにみられます。たびたび起こると、家族は頭にきてつい叱ってしまいがちですが、わざと隠しているわけではないので叱って説教することは控えたいものです。
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A:認知症の人のなかには、入浴に対して不安や恐れを抱く人がいます。裸になることが怖く、とくに陰部を見せることに対して羞恥心が強いようです。一番風呂にはいっていただいたり、タオルなどで陰部を隠したり、足湯などから始め浴槽に誘ってみましょう。
認知症によって物忘れが進むと、時間の流れの中で考えたり、総合的に判断することが難しくなります。また、日常生活では、身体を清潔に保つことに関心がなくなり、入浴することが面倒になります。
入浴時には、裸にならなければなりません。入浴の前後の流れがよく分からなくなっている認知症の人は、裸になる、裸にされるということに、不安や恐怖心を抱くことがあります。健常者にとっては、入浴時に裸になることは当たり前のことですが、認知症の人にはそれが理解できにくくなっています。服の脱ぎ方が分からない,洗い方がわからない、湯船の入り方が分からない。服の着方が分からない等不安で一杯なのです。また、入浴を促す人が誰だか分からない状態になった認知症の人にとっては見知らぬ人に裸を見せるのは恥ずかしく拒む気持になるのは当然でしょう
しかし、認知症の人も入浴をしていないことによる身体面の不快感は感じています。在宅にいる場合は家族と一緒に入浴する等工夫してみましょう。本人だけ裸になり、家族は衣服を着たまま入浴介助をしようとすると、認知症の人は不思議に思い拒否につながることもあります。入浴を認識するのに、昔の人は内風呂がなくよく銭湯に行っていました。洗面器に石鹸タオルをセットし、持って入っていただくよう誘導するのもいいでしょう。コーヒー牛乳をビンで飲んでいた人もいるかも知れません。入浴後のコーヒー牛乳の美味しかったこと思い出すかもしれません。
入浴時の気をつけたいポイント
・滑りやすい浴室には、手摺りをつけたり、マットを敷く。
・浴槽の中にもマットを敷く。
・できるだけ自分で身体を洗うようにしてもらい
洗い残した部分を家族が洗う。
・浴室から出たら速やかに身体を拭く。
できるだけ自分でしてもらい、拭けない部分を家族が拭く。
・冬季は、着替える場所や浴室を温めておく。
・自分で着易いようにセットしておく。
・着れない部分だけ手伝う。
・脱いだ下着の汚れ具合をチェックする。
・入浴後は、十分な水分をとる。(目次に戻る)
A:認知症になっても心は生きています。最後まで人としての感情、プライドは残っていますので、こうした感情に配慮すれば、してはいけないことが思い浮かぶと思います。
認知症は、認知機能という知的な働きが衰え、一人では生活できなくなっていく状態です。
しかし、認知症になっても喜怒哀楽の感情、思いや期待、プライドは残っています。認知症の人にしてはならないことの第一は、その人の感情を傷つけるような言動をすることです。思いや期待を裏切ったり、プライドを傷つけることがないように気をつけましょう
「私ができないことを無理にさせないでください」
「私が出来る可能性のあることは、そのまま放置せずに私が出来るように支援してください」
「私がわかる可能性のあることは、私がわかるように支援してください」
認知症の人は、言ったこと,見たこと、聞いたこと、したことを思い出そうとしても
すっかり忘れていることが多のいです。ついつい「さっき言ったでしょう!」「何度同じ事を聞くの!」と言いたくなります。
しかし、できなくなったことを指摘したり、無理にやらせようとすると不愉快になったり、プライドが傷ついて反発したくなるのも当たり前です。
お互いに感情的になって疲れてしまうより、残った機能(残存機能)に働きかけて、生活を支えるほうが平穏に過ごすことができます。
たとえば、掃除しても以前のように隅々まできれいに出来ないかもしれません。
「この部屋のお掃除お願いします」と言ってほうきっを渡し、掃除が終わったら
「ご苦労様でした。きれいにしてくれて有難う。助かります」
と感謝の言葉を掛けましょう。残ったゴミを指摘するなどして、出来ないからと言って仕事をとり上げないようにしましょう。ゴミが残っていれば後で本人のいないところでそっと片付けましょう。
認知症の人は、昔の記憶はしっかり残っています。
現在の首相の名はわからなくても、戦後の首相の名は覚えていたりします。
昔のことをよく覚えていることも、残存機能の1つなのです。 (目次に戻る)
A:三宅貴夫医師より 認知症の原因は、基本的には脳の病気であり、そのうち日本で最も多いのはアルツハイマー病です。最近の調査では、認知症の60%を占めているとの報告もあります。次に多いのが脳梗塞や脳出血などの脳血管障害です。そのほか原因として多くありませんが、正常圧水頭症、レビー小体病、ピック病などさまざまな脳の病気によって認知症が引き起こされます。
アルツハイマー病と脳血管障害による認知症は、治ることはありません。特に、アルツハイマー病は進行します。そのほかの病気の場合、経過はさまざまで、治るもの、よくも悪くもならないもの、進んでしまうものがあります。こうした脳の病気を筆者は「認知症の一次要因」と呼んでいます。
しかし、認知症という状態は一次要因だけで決まるものではありません。認知症の人の身体状態、精神状態、生活環境が認知症をよくしたり、悪くしたりするのです。筆者はこれを認知症の二次要因と呼んでいます。
二次要因のうち、まず身体状態として発熱、脱水、貧血などがあると、認知症は悪化しやすくなります。下痢が続き脱水状態になると認知症は悪化しますが、点滴などをして十分水分をとり、脱水状態を治すと認知症は改善されます。
精神状態としては、不安、緊張、混乱、うつ状態などが認知症を悪くします。アルツハイマー病の人がうつ状態になると、認知症が悪くなったようにみえます。しかし、うつ状態を治すことで、元の認知症の状態に戻すことができます
生活環境は、介護する人と居住環境とに分けることができます。介護する人が、認知症について理解があり、適切な介護をしていると、認知症が進まないことがあります。
また、気持ちが和み安心できるグループホームのような居住環境で生活することで、認知症の人が落ち着き、症状が改善することもあります。
認知症は脳の病気である一時要因と、3つの状態(身体状態、精神状態、生活環境)である二次要因であると理解しておくと、認知症をより正しく把握しやすく、適した介護につながるでしょう。
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A:「認知症の人と家族の会」が京都本部以下、全国に支部をおいています。静岡県では富士市に支部があります。そのほか、地域の保健所や市町の介護保険課、保健センター、社会福祉協議会などでも認知症の介護者のためのつどいが開かれています。
認知症の人を介護する家族の苦労は、実際に経験してみないとわかりません。認知症の人を日々みることの辛さは介護している家族にしかわからないでしょう。ましてや、24時間365日休むことなく続く介護、そして、先の見通しが立ちにくい生活など精神的、身体的にも大変です。介護に伴う家族の苦労や悩み、不安は実にさまざまです。
こうした気持ちを、真に分かち合えるのは、同じ経験をしているほかの家族だけかもしれません。医師に話を聞いたり、相談に乗ってもらうことも大切ですが、同じ立場の家族とは、心から分かり合えるでしょう。さまざまな経験談を聞くことで、介護による不安を解消できるかもしれません。
認知症の人を介護している家族たちによる集まりを全国的に開催しているのは「社団法人認知症の人と家族の会」で44都道府県にある支部です。
このつどいには誰でも参加できます。同じ経験をした、あるいはしている家族・本人から話を聞き、また、聞いてもらえることで、孤立感や悩みが軽減され、認知症に対する理解も深まります。さらに、経験に裏うちされた適切で役立つアドバイスや情報を得ることができます
各支部ではこうした集いを毎月、あるいは2ヶ月に1回開催しています。是非参加してみてください。静岡県支部では2ヶ月に1回開催しています。電話相談、面談は毎週土曜日富士市のフィランセにおいて実施しています。時間は10時~15時までです。最近では、認知症が初期、中期の人達が集いに参加し自らの思いや不安、苦労など本人同士で語り合っています。
<問い合わせ・資料請求・入会申込先>
社団法人 認知症の人と家族の会静岡県支部(すぎなの会)
富士市松岡 912-2 TEL0545-63-3130 佐野三四子
富士市フィランセ TEL0545-64-9042(土 10時~15時)
<年会費>
個人会員:年会費5000円(介護家族、専門職員など誰でも入会可)
団体会員:年会費10000円(主に介護家族を中心とした団体入会可)
賛助会員:年会費1口10000円(家族の会に賛助する個人や団体が入会可)
すぎなの会 の賛助会員 1000円
認知症の人と家族の会世話人 石田
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A:せん妄とは:せん妄の鑑別が必要な精神症状では、まず、認知症が問題になります。せん妄は認知症と異なり覚醒障害や認知障害が急性に発症し、一日のうちでも症状の強さが変動し、夜間に悪化する傾向があります。自分がしていることは意外とはっきり覚えていたりします。介護者の言動には十分注意が必要です。なお、もともと認知症がありそれに重なる形でせん妄が生じることもあります。
せん妄の原因はさまざまな要因によって引き起こされます。たとえば、癌などにより身体的に大きなダメージを受けた時や、大きな手術を受けた後や重度の帯状疱疹や感染症、重症な外傷を起こした時などには、よくせん妄症状が見られます。認知症の周辺症状が出現し困惑、そこに大きな病気が隠されている場面を、よく経験しました。急にそわそわ落ちつきなく歩き回ったり、奇妙な行動をしたりします。幻視や幻聴のための行動が奇妙に見えるのです。
せん妄症状への対応策として(不眠、混乱、興奮、見当識障害)
①「明確で簡潔なコミュニケーションをとる」
・はっきりと低い声で話しかける。
・繰り返し質問したり、「覚えている?」と言うような言葉は避ける。
・継続して声掛けをする。
・本人の言葉を強く否定しない。
・適宜現状について理解力に応じた説明をする。
・拘束を取る、拘束感を減らす。
・同じ状態を長時間続けない。
・車椅子での座位時間の調整。
②「全身状態のバランスを保つ」
・脱水防止、水分出納バランス・水分摂取量に注意を払う。
・水分チェックシートを利用し、不足していれば飲水を促したり、点滴にて補液を行なう。
・電解質のバランス・血液データに注意を払う。
・痛みのコントロール、痛みのマネジメントを行なう。
・便秘、下痢、排便の調整を行なう。
・正常な睡眠覚醒パターンを保持する。
・便秘、下痢等の排便の調整を行なう。
・薬剤の副作用を早期発見し調整する。(目次に戻る)
A:認知症そのものが原因で睡眠障害が起きるわけではありませんが、認知症の人は生活が乱れがちになり、夜眠れないことが多くなります。昼間できるだけ身体を動かすようにしましょう。寝室は真っ暗にせず、小さな電灯をつけておきましょう。また、ごく少量の睡眠剤を医師に相談し服用するのもいいでしょう。
一般的に高齢者は浅眠傾向にあり中途覚醒や早朝覚醒が多いようです。介護施設では、不眠傾向の利用者さんは、2日間寝なくても、翌日よく眠れていればよしとしている所もあります。
認知症の人は自分の状況はよくわからなくても、昼間周りに人がいたり、日常的な雰囲気を感じて、「ここにいてもよいだろう」と安心しています。ところが夜間になると、周りの人はおらず、部屋は暗く静かなため、どこにいるのか判断がつかず、これからどうなるのかと不安な気持ちに陥りやすいのです。そのため眠れなくなるようです。
このような場合、睡眠剤を服用すればよいと考えがちになりますが、不安が強すぎて、薬を飲んでも眠れない認知症の人も少なくありません。薬以外の方法を試みる必要があります。
朝日を浴びるのも良いそうです。日中の昼寝の時間は、30分以内にしましょう。天気の良い日は日光浴も効果があります。明るい日差しのもとで過ごすことが、自分の身体の体内時計のリズムを整えることが出来るそうです。「日中デイサービスに行った日は良く眠れている」という話をよく聞きます。
また、夜中に目覚めたとき、ここが自分の部屋だと分かるように、部屋は真っ暗にせず、電球など小さな明かりをつけ薄暗くしておきましょう。見慣れたタンスなどが目に入って、再び安心して眠るかもしれません。
こうした工夫をしても、なお不眠が解消されない場合は、少量の睡眠剤を服用すると眠れる場合もありますので、医師に相談してみてください。転倒の危険性がある睡眠剤ではなく、少量の抗精神薬が効果的な場合もあります。薬の効果が日中まで残ってしまうようなら、医師にご相談ください。微調整をしてくれるはずです。
昼夜逆転が長く続くと家族も疲労が蓄積し体調不良に陥ります。
早めの対策を考えましょう!(目次に戻る)
A:ご飯を食べたという記憶がすっぽり抜け落ちているので
「さっき食べたでしょう」と 説明しても納得しない認知症の方がいます。さらに何で食べさせないんだと怒り出します。
「昼食を今から作るので」といい、それまでお茶や軽めのお菓子を渡し待っていただきます。
認知症の基本的な症状は物忘れです。物忘れは食事についても起こります。認知症でない方は何を食べたかを忘れても、食べたことまでは忘れません。しかし、認知症の人は食べたこと自体忘れてしまいます。そのため、食事が終わってしばらくすると「ご飯はまだ?」と要求するようになります。それに対して家族は「さっき食べたでしょう」と説明しても、食べた記憶がないため納得せず「食べていない」と言い張ります。さらに、「食べさせないのか!」と怒るようにもなります。
認知症の人にしてみれば最初から沢山食べようとしているわけではなく、食べ終わったとたん食べたことを忘れ、次にいつ食べられるか分からない不安からまた食べる、と言うことを繰り返しているだけです。そんな時少し小盛りにしたり、カロリーの低いものを選んだり、おむすびなど食事と食事の間に食べていただく工夫をしてはいかがでしょうか。こんなに食べても肥満になった人をほとんど聞きません。
対処方法として、頻繁に続くようでしたら、まず食事をしたことをゆっくり丁寧に説明します。デイサービスなどでは、一緒に食べている仲の良い利用者さんに「さっき食べたよ」と言っていただくだけで効果があるときがあります。また、食べたら自分でカレンダーにしるしをつけ、食べたことを確認できるようにするとか、時計の文字盤に朝食、昼食、夕食と書いて貼っておくなどの工夫もやってみたら如何でしょうか。それでも食べてないと言い張るようでしたらカロリーの低いこんぶやするめなどの食べていても口の中にいつまでも残っていやすいものを食べていただき、安心感を持っていただくのは如何でしょうか。
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A:認知症の人は、どのような順序で洋服を着たらよいのか分かりにくくなっています。家族が見守りながらできないところだけ手助けしてあげると良いでしょう。
私たちが日常さりげなくやっている行為が認知症の人は分かりづらくなっています。しかし、そこでちょっと気配りや手助けをしてあげると自分でできるようになります。ちょっとしたアイディアで、本人が一人で着替えられるように工夫をしてみてください。例えば、手の不自由な人はホックやボタンからマジックテープを縫い付けたり、紐を取り付け服を引っ張りあげれるように工夫することで自分で着替えることができます。
認知症が進行すると、体で記憶したことが少しづつ曖昧になり、以前は問題なくできていたことができにくくなります。例えば排便するが拭かずに下着を上げる、歯を磨かずうがいだけする、箸を上下逆さにもって食べる、湯のない浴槽に入る、下着より先に上着を着てしまう、前後を間違えて服を着てしまう、片足づつ別の靴を履いてしまう、といったことが起こります。
これは認知症の症状の1つで、行為の組み合わせができずに、目的にかなった行為ができにくくなっているためです。身体で覚えた作業記憶が抜け落ちたものです。
更衣をするときに、順番に着ることができるように並べてみたり、ハンガーにつるし順番に前からとっていけるようにつるしてみたりなどして、チグハグにならないように見守ります。
ズボンを先にはいてから下着を着ようとするなど、一人で着がえられなくなったとしても、手や足は動きますから、すべてができないわけではありません。最初からすべてを介助して強制的に着替えさせるのではなく、まずは一人で着替えてもらい、見守りながらできなくて困っていたり間違って着るようであれば、そこで手助けをするのが良いと思います。そうすることによって、認知症の人も自尊心を傷つきられず、嫌がることも少なくなるでしょう。着替えが終わったら多いに褒めてあげましょう。「気持ちよくなりました」と声を掛けましょう。(目次に戻る)
A:原因に応じて考えなければなりません。原因として認知症が進行してコミュニケーションがとれなくなった場合、うつ傾向で話す気分にならない場合、難聴で会話が聞こえづらくなっており話したがらない場合があります。
<認知症の場合>
認知症が進行すると、自分のことや周囲のことが分からなくなります。
言葉を忘れてしまっているため喋るのをちゅうちょしてしまうのです。
言いたい事を察してヒントや最初の言葉を切り出してあげると
喋れる場合もあります。本人の思いや気持ちを汲み取る姿勢を見せてください。
会話が断片的になり、つながりがなくなり何を話しているのか分からなくなります。
しかし、言葉がまったく失われたわけではなく、残っている言葉も多くあります。
残った言葉を知り、言葉が発せられるように働きかけてみてください。喋れなくても
唄を歌える人もいます。間違えなくしっかり歌詞は覚えており歌うことができます。
不思議です。唄から言葉を引き出す方法を試みてください。話が分からないからと言って
認知症の人を無視しないようにしましょう。
<うつ状態の場合>
気分が落ち込み、食欲も低下し、行動が緩慢になって、夜眠れなくなります。
こうしたうつ状態になると、自分から語ることは少なくなります。
たまに話しても「頭が痛い」「だるい」「気分が悪い」「死にたい」などと、悲観的な言葉ばかり
訴えます。
しかし、うつ状態でも喋ることは出来ます。気持ちを明るくしようと「もっと元気を出して」
と励ましたり、「はっきり話しなさい」などと説得することは避け、そばでゆっくり聞く
姿勢を示してください。そうすることによって、徐々に軽減し喋れるようになってきます。
<難聴の場合>
以外に見過ごされがちですが、難聴の場合があります。
難聴になると相手の話が聞こえにくいため、自分から話すのをやめ言葉が減ってきます。
周囲の人や家族は、テレビのボリュームを上げたり、そばで話しているのに
反応がないことに気づくでしょう。そんな時、かん高い大きな声は余計聴き取り
づらいようです。その場合、耳元でゆっくり、はっきりと相手の聴き取りやすい
音の高さで、出来るだけ短文で言葉を掛けるようにします。相手の会話が
聴き取りにくくても、こちらが相手の気持ちになって耳を傾ける姿勢を
示すことによって、会話が増えてきます。
また、補聴器を使うのを勧めてみましょう。認知症の人であっても
最近のデジタル式補聴器(マイクロコンピューター内臓で人の言葉を選択的に
増強する機能があり雑音が少ない)が認知症の人に適したものもありますので
一度耳鼻科を受診して難聴の原因と程度を診断していただき、どのような
補聴器が良いか相談しましょう。また、直接補聴器専門店に出向いてみていただくのも
良いと思います。(目次に戻る)
A:アルツハイマー病は遺伝病ではありません。確かにアルツハイマー病の中には非常にまれですが、遺伝性のものがあります。家族性アルツハイマー病といわれるものです。遺伝形式ははっきりしていて14番、21番、及び1番の遺伝子の異常が発見されています、しかし、通常のアルツハイマー病は弧発性アルツハイマー病のため、はっきりした遺伝を示しません。
若年性のアルツハイマー病を患った家族にしてみれば、ご心配のことと思います。結婚を控えている家族にしてみればなおさらご心配だったことでしょう。
遺伝病と違っている点は、親から子へ確実に伝わるわけではないということです。
環境や生活習慣、長生きなどのさまざまな要因が関係して発病につながるのです。
アルツハイマー病の病態は、高齢になるとβ(ベーター)蛋白といわれる異常なたんぱく質が、脳内に溜まってくることから始まります。これがさらにアミロイドという塊になって、神経細胞のネットワークを破壊します。通常βー細胞は、酵素の働きで分解されますが、アミロイドになると分解できなくなります。この塊を顕微鏡でのぞくと、しみのように見えるので老人斑とよばれています。
(長谷川和夫著 知りたいことガイドブックより)(目次に戻る)
A:人に頼らず、自立して生きていきたいという気持の強い人では、自分が忘れるわけがない(忘れたなどということが受け入れられない)と思うあまり、そばで世話をしている人が盗んだという、物盗られ妄想がしばしばみられます。これは、物忘れという中核症状に、自立心が強いと言う性格や、心ならずも家族に迷惑をかけているという状況が影響して起こる周辺症状です。疑われている介護者が疲弊しないように、あまり深刻にならずに違うところに気持が移るように工夫しましょう。こういう妄想は 時期が来れば自然に見られなくなります。
<物盗られ妄想がより複雑なな妄想になることもある>
妄想的になりやすい素質を持った人にストレスがかかったときに、単純なもの盗られ妄想から「嫁は家の財産をねらっている」とか「家を乗っ取られる」といった妄想に発展します。これには「妄想的になりやすい」という素質が深く関与しているので、妄想を治療する抗精神薬が効果を上げることが少なくありません。単純なもの盗られ妄想にしては訴えがオーバーだったり執拗にに訴えてきた場合は、妄想の対象になっている人を守るためにも本人の症状を軽減するためにも、認知症を良く理解している専門医(物忘れ外来、精神科)に相談しましょう。
記憶障害や見当識障害などは、脳の神経組織の障害によって起こり、認知症の人全員に現れるので「中核症状」と呼ばれています。認知症には、このほか、周囲とのかかわりで起こる「周辺症状」とよばれるものがあり、認知症の人のおよそ8割に現れると言われています。
現実には起きていないことを信じて疑わないことが「妄想」です。ただし、ご本人が確信するのには、本人なりの理由があるのです。例えば、「財布を家族が盗む」と確信する場合。おそらく、①.財布をタンスの引き出しの中にしまったのに忘れてしまった(記憶障害) ②.一方で「財布は机の上に置いたはずだ」と思いこんでいる(記憶障害) ③.「机の上に置いた財布がなくなったのだから、家族が盗ったに違いない」と推測する、と言ったプロセスがあるのでしょう。周辺症状は、このように中核症状がもとになって現れる場合が多いと言われています。
介護施設では、そんなときは叱らずに本人と一緒に探してみるという対応をします。スタッフだけで見つけて本人に差し出すと「やはり盗ったのだ」などと言われるかもしれないので、見つけたら分かりやすいところに置いて本人に発見させるようにします。認知症の人は「自分が忘れていた」とは言わず、たいてい、「どうしてこんなところにあったんだろう」と言うと思いますが、そこは我慢して心を落ち着かせ少しオーバーめに「見つかってよかったですね」と共感する言葉掛けをします。また、何度も何度も盗ったと訴える場合は、気分を違う方向へ転換させるように配慮しています。
妄想とは現実に起こっていないことを起こっていると確信する、訂正不可能な間違った考えをいいます。内容によって、被害妄想(例:誰かにいじめられている)、追跡妄想(例:いつも誰かにつけられている)、嫉妬妄想(例:自分の夫あるいは妻が浮気しているに違いない)などがあります。精神疾患の統合失調症などにもよくみられます。
物盗られ妄想は、認知症によく起こります。認知症になると、すべての人がこの妄想にとらわれるわけではありませんがおよそ10~20%にみられるといわれます。男性よりも女性に多いのも特徴です。
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A:物忘れが進んだ自分自身に自信がなく不安なため外出をためらうようです。プライドがあるので、失敗した場面や今まで自分が出来ていたことに対しての急に出来なくなったことへの焦りがあります。認知症のこともかかりつけ医に相談しましょう。
<「ためらい」というハードルが及ぼす悪循環>
自分は認知症かも知れないと自覚しても、恥ずかしいから病院には行かない。また、周囲の人が気づいた場合でも、「まだ言わないでおこう」と、本人を気遣ったつもりで病院には連れて行かない。そうした行動は、結果として認知症の症状を悪化させ、もっと早く病院に言っていれば対処方法もあったのに・・・と後悔するケースがわが国では多いようです。認知症はれっきとした「病気」なのですから、恥ずかしいことでも、みっともないことでもありません。ためらわず早めに医師に相談することが、何よりも大切です。
<認知症の症状に気づいてから受診するまでの期間>
6ヶ月以内→4.5% 6ヶ月~1年未満→10.9% 1年~2年→12.7%
2年以上→66.4% 不明→5.5%
<認知症のこともかかりつけ医に相談を>
「痴呆」という言葉には侮辱的なニュアンスがあり、偏見や誤解を招く原因となっていたため、痴呆から認知症に名称が変更されたのはこうした理由によるものです。病気の正しい理解と早期発見、早期治療につなげたい、認知症の人の尊厳を傷つけないように接してほしい。そんな意図もこめられれています。実際に認知症が疑われてもどこにも相談できず、妄想や幻覚、徘徊、などの症状がひどくなってから、助けを求めるケースは今も少なくありません。
そこで、厚生労働省が中心となり認知症の早期発見、対応のための体制づくりがスタートしました。かかりつけ医が高齢者の日常の健康管理だけでなく認知症の早期発見に努め、専門医療機関と連携して認知症の疑いのある患者さんを紹介してくれます。認知症を学ぶための研修制度を開業医の先生が受講しています。「もの忘れ相談医」が増えることを期待しています。
デイサービスでは、自宅に引きこもって外に出掛けようとしない利用者さんへは、あの手この手を使いながら誘い出します。ひ孫に誘われて来るときもあります。先日は先生が往診に来てくれるので行きませんか?と誘うと着替えを済ませ車に乗り込む場合もあります。(目次に戻る)
A:認知症になると出来ないことが多くなりますが、出来ることもたくさん残っています。それを見つけて出来ることは自分でやってもらうようにすると、自信が出て明るくなるかもしれません。認知症の人は感情面が非常に豊かです。相手の姿が鏡に映し出されるように相手の表情や声のトーンに反応します。優しく包み込んでくれる愛を求めています。
認知症の人が悲観的なことばかり言い、うつ状態にあるからといって、言葉で激励しても逆効果のことがあります。「自分のことをわかってくれない」と思うからです。常に優しいまなざしで笑顔で接するように自分自信に働きかけてみましょう。
認知症によって出来ないことが増えていきます。やりたくても出来なくなっていく自分に腹立たしく思い、辛い気持ちを抱いています。辛い気持ちを無視したり、出来ないことを無理にさせられるのは、認知症の人にとって不愉快なものです。さらに困惑を深めたり、気持ちが落ち込む原因にもなります。
一緒に楽しみ喜び合うことで認知症の人も結果的に明るく、元気になることが多いようです。また、認知症の人がよく覚えている昔のことを聞いたり、得意なことを教えてもらうのも、気持ちを明るくすることにつながります。
常に介護者は前向きにボジティブに!
精神的身体的に健康で安定的でないと顔の表情に嫌な思いの自分の姿が出てしまいます。
普段から口角を上へ上げるようにしましょう。
自然に笑顔が出て来ます。
笑顔で接すると安心されます。(目次に戻る)
A:認知症の中でも、脳血管性認知症は、その原因となる脳梗塞や脳出血が起こらないようにすることが、一番の予防法です。それに対して、アルツハイマー病の場合は複雑です。今のところ100%予防できる方法は見つかっていません。しかし、「生活習慣病の治療」をするだけでなく、普段から「運動の習慣化」「脳の活性化」「食生活の見直し」をこころがければ、アルツハイマー病になるリスクを減らせることがわかってきています。
○生活習慣病を治療しましょう。
脳血管性認知症の発病に関係しているのは、高血圧症や高脂血症、糖尿病です。これらは良くない生活習慣の積み重ねで発病する「生活習慣病」ですが、実はこうした病気がアルツハイマー病の発病にも関係していることがわかってきたのです。すでにこうした病気になっているのでしたら、そのままにしておいてはいけません。血圧を下げる、コレステロールや中性脂肪を減らす、などの治療を続けてください。もちろん、生活習慣病にならないように生活習慣を見直すことが、認知症にならないための、何よりの予防といえます。
○運動を続けましょう。
運動を続けることが生活習慣病の予防になることは、よく知られています。それだけではなく、運動は脳に良い影響を与え、アルツハイマー病の予防にも効果があると言われるようになってきました。
ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などのような有酸素運動(肺から取り入れた酸素を使って筋肉を動かす運動)を汗ばむ程度の強さで続けると、脳の血流が良くなり、脳へ送り込まれる酸素が増えます。それによって脳が活性化します。また、運動の刺激そのものが脳の神経細胞を刺激するとも言われています。
大切なのは運動を続けること。無理なく楽しく続けられる運動を見つけてください。
まずは一日10分でもいいのです。呼吸が苦しくならない程度のウォーキングから始めるのも良いでしょう。
○脳を活性化する活動をしましょう。
認知症の治療法のひとつが「脳のリハビリテーション」です。リハビリテーションに役立つことは、認知症の予防に役立ちます。趣味の活動や頭を使い活動を続けている人は、そうした活動をあまりしていない人に比べて、認知症になる確率が低くなると言われています。新しいことを学んだり、技術を新たに習得しようとしたりすれば、使う神経細胞の数が増え神経細胞どうしが結びつくネットワークが強化されます。あらかじめ脳を強化しておけば年をとって少々神経細胞の数が減ってもアルツハイマー病にならないだろうと推測されるのです。体力がある人が少々の風邪ではへこたれないのと同じですね。(目次に戻る)
A:認知症の人のためのケアマネジメントツールです。
認知症介護研究センターで開発に取り組み、H15年出来上がりました。共通の5つの視点を重要な指針とし、困ったときには、この共通の5つの視点に立ち戻って皆で話し合っていきます。
① その人らしいあり方
② その人にとっての安心、快
③ 暮らしの中での心身の力の発揮
④ その人にとっての安全、健やかさ
⑤ 馴染みの暮らしの継続(環境、関係、生活)
<どうしてセンター方式が認知症の介護に良いの?>
A:本人の人格を尊重し、その人らしさを支えられるツールだからです。
認知症高齢者の特徴として記憶障害や見当識障害が進行していく一方で、喜びや悲しみなどの感情や思いやり自尊心などは、認知症が進行しても残っています。これらの特性を周囲の人が十分に理解し、本人の人格を尊重し、その人らしさをどう支えるかが大切です。生活支援のためのツールとして開発されました。今そのツールの良さが現場に浸透してきています。認知症ではない高齢者の方にも使用しています。
<センター方式の目指すものってなに?>
A:認知症の初期から終末期に至るまで高齢者一人ひとりの尊厳を支えるこれからの認知症ケアの考え方に基づき、在宅や施設を通じた利用者中心の継続的なケアの実現をめざしています。
<センター方式のねらいは?>
A:チームケア全員で取り組むことがねらいです。
ケアマネージャーやケアに関わる方、利用者、利用者の家族が一体となって、関係者がもつ情報や気づき、ケアの具体策を利用者中心に考え、とらえ良質なケアを提供すると共に、その過程を通してケアチーム全体の成長を促していくことがねらいです。(目次に戻る)
A:認知症は決して恥ずかしい病気ではありません。脳の病気です。出来るだけオープンにすることによって、本人の戸惑いや不安が減るでしょう。今認知症サポーターが100万人を突破しました。出来るだけ多くの人に知ってもらったほうが、本人にも、家族にも負担が少なく、支えが得やすくなるでしょう。
認知症は一般的な病気になってきましたが、まだまだ家族は恥ずかしい、隠しておきたい気持ちを持っているようです。特に若くして認知症になった場合は周りの理解も乏しく、隠しておきたい気持ちが強いのでしょう。
しかし、周りの人は「何かがおかしい」と気づいていることも多いのです。そうした場合、隠しておくほうが不自然で、本人も家族も隠すという余計な気苦労も増えてしまいます。むしろ、辛くても周囲に知らせておくほうが精神的に楽ですし、さまざまな形での支えも得られ、結果的にはより負担の少ない生活を送ることが出来ます。
知らせる人の順番は特にありませんが、身近な人よく理解してくれそうな人、生活するうえで知っておいてほしい人(上司、かかりつけ医、取引先、銀行、郵便局など)から始めるのが良いでしょう。ただし相手が認知症について偏見をもっていないかを確認しながら、話を進めてください。「何も分からなくなってしまった」と間違って理解され、マイナスの結果を招くことがあるからです。病院などが発行してる認知症のパンフレットなどを利用し、偏見や誤解をなくすような説明を心がけましょう。仕事を続けていく場合は、勤務先の上司に病気の特性も含めて必ず伝え、周囲の人たちに理解してもらえるよう努めましょう。理解してもらえれば勤務方法への配慮や、問題とされる行動(BPSD)がでた際の助けも得られます。また、有利な退職方法や障害者年金の相談にのってくれるかもしれません。
親戚に認知症になってしまったと知らせれば、何らかの支援を得られることがあります。近隣の人たちも同様です。認知症の人たちが勝手に外出したり、異常な行動をしているのを見かけたら助けてくれたり。早めに連絡をくれるようになるでしょう。
ただし、認知症の人の症状や行動は相手よって変わることがあります。優しいまなざしで声を掛けた場合とそうでない場合本人の反応に差がでます。認知症を理解されている方は声の掛けかたが違うのです。
親戚が電話で本人と話したくらいではその変化に気づかず、なかなか状況を理解してもらえないかもしれません。その場合、一日でも良いので一緒に生活をしてもらうと、認知症の人の本当の姿が見え、介護の大変さがわかることでしょう。
診療の際に混乱が起きないように、眼科や歯科の先生にも話しておきましょう。銀行や郵便局にも伝え、預金額を確認し、不自然な引き出しがないか調べてもらう必要があるかもしれません。本人の判断力があるうちに、「成年後見制度」の利用を考え、家庭裁判所に相談ておくのも良い方法です。又、近くの包括支援センターに相談するのも良いでしょう。(目次に戻る)
A:一人暮らしの認知症の方に、時々みかける行為です。明らかに他人の家のものであれば、事情を話し、誤って返すしかありません。自宅や玄関先にこうしたものを山済みするようであれば、説明しながら一緒に片づけます。
認知症の人の中には、持ち物(特にカバン、衣服など、自分が身につけ、大切にしているもの)への執着が強くなるケースがあります。家の中で目に入るものが自分のものなのか、他の家族のものなのか区別がつきにくくなり、「おそらく自分のものだろう」⇒「絶対に自分のものだ」と考えが変化するようです。これは一種の自己防衛なのかもしれません。
状況判断が出来にくくなって、自分に有利に物事を考えたくなるのでしょうか。
そのためよくわからない場合は、”自分の物”としてしまうのです。
こうした認知症特有の判断や行動は、外でも現れることがあります。特に注意する人が近くにいない一人暮らしの認知症の人の場合、外出して目についたもの(路上に落ちている物、捨てられた物、他人の家の物など)を自宅に待ち帰ってしまうことがあります。それらは部屋や玄関に置かれ、そのうち山積み状態になります。家の外にまで置いて時にはゴミなどが悪臭を放つこともあります。しかし、本人はあまり気にしていません。
こうした行為をやめるように説得しても、「他人に迷惑をかけているわけではない」「捨ててあるものを拾っただけ」と言い、同じことを繰り返すでしょう。外出しても物を拾い集めるのが日課となっていて、周囲に迷惑をかけていないようであれば、黙認しても良いかと思いますが、拾い集めたものが山積みになっていて危険な状態になってしまった場合には一緒に片づけたり、業者に依頼しましょう。拒むことは意外と少ないようです。また、すぐに認知症の症状のため、片付けられずにもの集めが始まり同じことの繰り返しが続きます。しかし、認知症は進行するのでそんなに長くは続きません。
(目次に戻る)
A:認知症の人の失禁は、さまざまな原因で起こります。原因を理解しながら、それに適した工夫をしましょう。排泄は重要な日常行為です。認知症の人の排泄では、できないことを補って失敗を少なくするようにしましょう。排泄は(尿や大便)人が生きていくうえで重要な行為です。
便秘や下痢が続いても困ります。普通に排泄があっても、認知症の人は失敗が多くなり、介護負担を増やす原因となります。
排泄は子供の頃からのしつけと習慣で覚えているものですが、高齢になると身体機能が衰え(膝が痛くて歩きづらい、腹筋が弱って尿意や便意を我慢できないなど)によって、トイレに行くまでに漏らしてしまうことがあります。単に身体機能が落ちているだけなら、ポータブルトイレをベッド横に置くなどすれば失敗は減るかもしれませんが、判断力の低下している認知症の方は、ポータブルトイレの使い方が理解できず、期待する結果が得られないことがあります。むしろ介護の負担が増えるだけかもしれません。
認知症によって排泄する場所がわからなくなり、失敗するケースが多くなってきます。
認知症が軽いときは、時々下着を汚す程度で、大きな失敗はありません。
しかし、認知症が進んでくると、トイレの場所を探しているうちに間に合わなくなり、便失禁につながってしまいます。特に便が柔らかかったりすると、部屋や廊下を汚すことが増えます。
さらに認知症が進むと、排泄のこと自体がほとんどわからなくなります。
また、自分で処理をしようとして壁や服を汚してしまうことがあります。
家族にしてみれば汚れをきれいに落とさなければならず、精神的にも、肉体的にも負担がかかってしまい、疲弊してしまいます。
このように、認知症の進行によって、少しずつ失敗が増えますが、認知症が軽いからといって、練習や学習によって認知症がもとに戻ることはありません。
そのため、認知症の人ができること、できないことを見分けながら、できないことを手伝うようにしましょう。
トイレが上手く使えない場合は、トイレのドアを少し開けたままにします。
完全に閉めないほうがよいでしょう。
ドアを開けたまま排泄するのは、本人にとっても外にいる人にとっても抵抗があるかもしれませんが、閉めてしまうと内側から開けられなくなることもあるからです。
また、トイレの場所がわからず、探しているうちに漏れてしまう場合があります。
認知症の人の部屋をトイレの近くに移すのも良いでしょう。
トイレのドアに「トイレ」と書いた紙を張っておくのも効果的です。
認知症の人は特に水洗トイレの使い方がわかりにくくなり、排泄が終わっても流さないだけでなく、残った大便を始末しようとして、触ってしまったりします。
汲み取式のトイレを使っていた記憶だけが残っており排泄した便が残っていると、気になって何とか処理しようと便器の中を手でかき回すこともあります。
便の性状を確認することも大切です。認知症が進むと排便のコントロールが出来にくくなります。下着の中に大便を排泄したまま行動することがあります。これは認知機能低下のために便意をもよおしてもどのようにトイレへ行って排泄すればよいかわからず起こります。
便失禁は下痢のとき多いようです。下痢は体力の低下にもつながりますので、
予防や早期治療が大切です。下痢が起こったときは下痢止めの薬が効果的です。
下痢による脱水症状にならないように水分を多めに飲んでいただきます。
早めに医師に相談してください。
失禁をしてしまったときは、騒いだり叱ったりせずに、すぐに始末をしましょう。
速やかに汚れを拭いて肌を清潔にし、ただれなどが起こらないようにしましょう。
時間を決めてトイレに誘いましょう。特に食後トイレに誘ってみましょう。
胃結腸反射が活動し便意をもよおします。決まった時間に排便をする習慣をつけましょう。
腹部の「のの字」マッサージも効果的です。のの字を描くように両手の指(中指、薬指、人差し指)6本で腹部を軽く圧迫していきます。
皆さんも1度やってみてください。腸がよく動く様子が確認できますよ!(目次に戻る)
A:外に出かけてガラクタを集めて困っているようですが、集めることを非難して、片付けてしまうと不穏になったり妄想的な言動が出てきますので、周囲の人がそれほど困らなければそのままにしておいてもよいと思います。しかし、不衛生で悪臭があるという問題があれば、悪臭を放つものや不衛生なものを、本人のいない間に片付けたことがわからないように処分してはいかがでしょうか。
その場合、「汚い」「何で拾ってくるの」「笑われる」「こんな恥ずかしいことをして!」などの言葉は、本人を傷つけるだけですので禁句です。それよりも、「重たいものを持ってけがをしないように気をつけてくださいね」といって、持ってくることを正面から認める言葉で話しましょう。
本人からしてみれば、大切なもなのでしょう。他人が見たら何でそんなものを集めるのかと思うかもしれません。集めることで困ることがおきたり、他者とのトラブルになったり、本人に悪影響がある場合は行動をとめなければなりません。
しかし、そのことで問題がなければ、集めたものをとりあげなくてもよいと思います。無理にやめさせようとするとかえって逆効果となります。
集めたものをどうしても返してもらいたい時は、代替のものを用意しておきかえるほうがよいと思います。集めたものを何とかしようとする前に、今の関わり方が適切かどうか考えましょう。何となくべっ視した態度や、孤立させていないかもう一度振りかえってみましょう。関わり方を見直すと、周囲との人間関係が、問題行動の引き金になっている場合もあります。
物忘れで他人の物との区別がつかないのに、盗ったのではないかという目で見ていないかなど、関わり方を再度確認してみましょう。(目次に戻る)
A:奥さんのように早期の場合には、次のことをお勧めしています。つまり記憶を補助してくれる備忘録などを利用してみましょう。自分なりの対応策を講じてください。
私たちは、時計、カレンダー、日記、新聞などから記憶のもとになる情報をえています。記憶に障害のある人には、こうした情報源に対して今まで以上に注意を払いましょう。実生活をするにあたって、スケジュールを予定通りこなしていくことに関する記憶が大切なはずです。スケジュールを書き留める黒板、白色ボード、メモ帳、手帳など十分活用しましょう。
さらにあなたと奥さんが相談しながら、奥さんに合った備忘の手段を考案されるのが一番ですが、その際のポイントを示します。
<ポイント>
○使い慣れた道具を用いて、すぐに手の届くわかりやすい場所に置く。
○腕時計と掛け時計は、いつも正しい時間を示しているようにする。
○今日が何日かよくわかるように、毎日カレンダーの日付をチェックする。〔日めくりカレンダーも良い)
○目立つ場所に黒板を置いて、予定など掲示する。また、この掲示を日課とする。
○毎日メモ帳にその日の予定を記し、これを目に付く場所に置いておく。奥さんがこのメモ帳をことあるごとに見るように、予定が すんだらそのたびにチェックするように指導する。
○あなたの外出に際して奥さんが一人で留守番する場合は、行き先と帰宅時刻を書いたノートを置いておく。あなたがいつでも外出できるようにこのことを習慣にしてください。
○家族や親しい友人の顔写真をその名前と共に掲示する。あるいは、アルバムの写真にその人の名前を記入して、時々見るように進める。
(目次に戻る)
A:暴言暴力行為はあなたの責任ではありません。アルツハイマー病の人たちの多くは、怒りと、時には攻撃の段階を通過していきます。自分の不安を表現できないため、このような行為に出てしまいます。怒りも病気の一部だと思い、医師に相談しましょう。
あなたが「自分に責任がある」と思ってしまうのは自然なことかもしれません。しかし、お父さんの怒りは、本当はあなたに向けられているのではないということを理解してください。認知症という病気を理解しましょう。この怒りの段階はやがて終息していきますが、しばらくは「何がお父さんの怒りの引き金になっているのか」考えて対応していくとよいと思います。「お父さんの苦しみを私も理解していますよ」という気持ちで接してみると、安心され落ち着いていく場合があります。
お父さんがひどく怒る理由としてたくさん考えられます。今まで自分ひとりで洗濯などやってきたのに使い方が分からない。しかし助けは借りたくないと思っているのかも知れません。ただ単に何かが出来なくなったことで、がっくりきているのかも知れません。
ほかに考えられることとして、お父さんは自分の身の回りにおきていることを理解できなくなってしまったことに動揺し、驚いているのかも知れません。あるいは単に退屈し、エネルギーをもてあましているのかも知れません。時には、空腹、排泄欲求、便秘なども、お父さんの破壊行為に通じていることもあります。もし爆発的行為が最近始まったばかりでしたら、感染症にかかってるか、何か苦痛を感じているのかも知れません。
どんなことがお父さんを怒らせているかがわかったら怒る回数を減らせるかも知れません。いづれにしても自分ひとりで抱え込まずに社会資源を使い介護保険を利用されると良いと思います。
まずはご本人の思いを理解するようにしていきましょう!(目次に戻る)
A:認知症を理解すると認知症の症状も理解できるようになります。本人の思いや気持ちが理解できるようになってきます。ご主人の記憶は不明確で絶えず不安でいっぱいなのです。同じことを何回も聞いたとしても、その都度冷静に始めて聞いたように答えてあげることは大切です。
介護者の気持ちを切り替えたり、違うところに興味を示してもらえるように配慮してみてください。
たしかにこれはとてもイライラさせられることです。何故こうしたことが起こるのかというと、ご主人の記憶が不確かで、絶えず不安感があるからです。
アルツハイマーー病の人は周囲で起こっていることを十分に理解しきれないのだ。と言うことを、常に思い出すようにしていきましょう。
そうすれば、ご主人の話を少しは忍耐強く聞けるようになるのではないでしょうか。また、次のことを知っておくと役に立つでしょう。
とめどなく質問をし続けるご主人に返答するかわりに、「万事上手く運んでいますよ。私がいろいろなことをきちんとやっているので大丈夫ですよ」と、安心感を与えるように言ってみてください。あるいはは答えを紙に書いてあげることも良いでしょう。ご主人が同じ事をきいてきたら、紙に書いた答えを見るように仕向けることができます。
もし答えをあげたり不安感を除いてあげる努力をしても、ご主人が特に1つのことにこだわって質問し続けるときは、話題を変えて注意をそらしてあげたり、抱きしめてあげましょう。
また、ご主人が同じ質問を繰り返さないようなときに、たくさんの愛情を注いであげることです。やがてそのような質問をしなくなるでしょう。
(目次に戻る)
A:介護休業制度を利用しましょう。休業を撮取る際には、職場の人たちの理解が大切です。日ごろから、信頼関係やコミュニケーヨンのほか、職場の理解度がカギになります。そして絶対に一人では抱えこまないようにしましょう。
まず、介護と仕事の両立支援策としては、国をあげての“ワークライフバランス"の推奨として企業や事業所に義務付けれている「介護休業制度」の利用が考えられます。対象家族一人につき、通算93日までの休暇が取れます。
そのほかにも、①.勤務時間の短縮②.フレックスタイム制の運用③.始業・終業時間の繰上げ、繰り下げ④.在宅勤務制度⑤.介護休業中の生活保障など企業によって様々なきめ細かいサービスを行っているところもあります。自分の会社にどのようなサービスがあるか、あらかじめ調べておくことも必要です。
また、休暇をとる際には、職場の人たちの理解と応援策しては、なかなか難しいのが実情のようです。日ごろからの信頼関係やコミュニケーションのほか、職場の理解度がカギになります。
地域の介護サービスの情報についても、できれば事前に情報を収集しておきましょう。急に看護や介護が必要になってから探しまわるのは大変です。自治体の介護保険制度や高齢者対策の窓口、あるいは地域包括センターなどでも相談に乗ってくれます。尋ねておきましょう。公的な介護保険サービスのほかに、インフォーマルなNPOや社会福祉協議会の実施している有償サービス(家事援助や見守りなど)も積極的に利用することをお勧めします。
こうした有償サービスを上手に利用すれば、介護保険サービスではなかなか埋められない出勤前や夕方から帰宅までの隙間の時間帯を補完できます。
育児とは違い介護は予測できないマラソンのようなものです。平成18年度から始まった介護保険制度の中の小規模多機能型居宅介護の制度も柔軟な対応ができますので、ケアマネージャーさんにご相談下さい。
無理なく介護を継続していくコツは『絶対に一人では抱え込まない・介護にのめりこまない』こと。でないと心身のバランスを崩します。特に肉親への深い愛情や、親類からの「あなたが仕事を辞めて介護をやるべきよ」などのプレッシャーに押しつぶされ、一時的な感情で離職してしまわないことです。
いかに応援者をたくさん巻き込みつつ調整していくか、あなたのマネジメント力を生かす場面です。地域での介護の会・認知症の人と家族の会に参加すれば、仲間や介護経験者などから、温かい励ましや知恵をもらえることでしょう。
介護者自身が精神的な余裕を持ち、有益な情報を得ながら介護をすることが、結果的には介護される本人にとってもより良い介護環境を作ることになります。
何よりもあなた自身の心身の健康を大切に!あなた自身の人生なのですから。(目次に戻る)
A:ピック病はまれな認知症です。多くの点で他の認知症と共通するところもありますが、重要な相違がいくつかあります。前頭側頭型認知症とも言います。アルツハイマー病のように脳全体が萎縮するわけではなく側頭葉や前頭葉に限局して萎縮していく病気です。
ピック病は多くはアルツハイマー病よりも早く40~50歳代に発症します。実態はまだ良く分かっていません。アルツハイマー病患者の1/10程度と言われていますが、正確な罹患率は知られておりません。
症状に特徴があります。初期には、記憶力低下や生活障害は軽く、この時点で認知症と見なされないことが多くあります。その一方で人格の変化が見られます。人が変わったような奇妙な行動を繰り返します。万引きをするとか平気で破廉恥な行動をすることがあります。誰彼かまわず、性的な行為に及ぶようなこともあります。物事に無頓着でだらしがなくなり無精な生活を続けたりします。
人から注意されたり叱られたりしても耳を傾けることが少なく、自分勝手でわが道を行くといった行動になります。深く物事を考えず、悩んだりする様子もありません。その他、決まりごとにこだわることも特徴です。(決まった道しか通らない、決まったものしか食べないなど)
あまりにも異常な行動が続く時期は、一時的に精神科医療施設に入院して、対症療法的な治療が必要な場合があります。
病気が進行すると、言葉の意味が分からなくなり、例えば、カレーライスとかみそ汁といった名詞さえも分からなくなります。動作についての記憶は保たれ,失見当識もないので電車やバスなどに乗ることができ、迷子になるようなこともありません。長年にもわたってこうした症状が持続しますが、やがて認知症が進行し無言、無動、そして寝たきり状態になります。発病してから十数年以上の経過をたどります。
もう1つの特徴として、自分の言いたい事を表現できなくなることがあります。これは左前頭葉に言語を喋るのに重要な部分(ブローカー領域)の障害によって生じます。(目次に戻る)
A:脳の神経細胞の中に、ある種のたんぱく質が固まって「レビー小体」ができることが、この病気の原因です。レビー小体はパーキンソン病の原因にもなっていますが、それが出現するのが記憶などに関係する部分だと認知症になります。
レビー小体型認知症は、日本で発見された病気です。(レビー小体病発見者小坂憲司横浜市立大学名誉教授)アルツハイマー型認知症と間違えて診断されているケースが少なくありません。正確に診断すれば、脳血管性認知症よりも多い病気だともいわれています。アルツハイマー病とは症状の現れ方が少し異なります。
側頭葉と後頭葉(視覚中枢がある)の萎縮や活動性の低下が特徴です。パーキンソン病の病変に見られるレビー小体という異常な構造物が、認知機能に関わる大脳全体に見られることから名づけられました。
症状として、記憶障害や「いつ」「どこで」が分からなくなる見当識障害は、アルツハイマー病の場合ほど多くはありません。多くの場合走した中核症状よりも、周辺症状のほうが先にあらわれます。
例えば具体的な内容の「幻視」がしばしば現れます。生々しい幻視、見知らぬ他人が家の中を歩いているとか、自然の景色が見えるとか、幻視体験が繰り返し起こります。
「抑うつ」や「妄想」が現れることもあります。こうした症状は時間帯によって、日によって、目だったり目立たなかったりします。また、筋肉がこわばったり動作が遅くなったり、身体全体の動きが悪くなるのがパーキンソン症状です。とくに、足がすくんだようになり、最初の一歩が踏み出せません。歩き出すとチョコチョコとこきざみになったり、あるいは前傾姿勢で突進するようになったりします。比較的進行が速いので、初期の頃から介護が大変になります。
さらに、便秘や失禁、起立性低血圧(立ちくらみ)などの自律神経症状を伴うことがあります。治療としてはパーキンソン症状には、抗パーキンソン剤が有効な場合があります。レビー小体病はアルツハイマー病と同じように、アセチルコリン分解酵素阻害薬(たとえばアリセプト)によって効果が現れると言われています。
<その他の特徴>
・男性に多い
・初期の頃は物忘れを自覚している
・被害妄想や嫉妬妄想が起こりやすい
・画像検査では認知症の割りに脳の萎縮が軽い(目次に戻る)
A:毎日のことですので、元気で仲の良い夫婦だって、時には大声を出し合うことはごく普通のことです。しかし、今の奥様は生活全般ができなくなって半年ということですから、奥様自身も不安や戸惑い・混乱を感じて、何をどうしたらよいのかわからないのに大声をあげられると益々混乱してしまいかえって逆効果となります。また、周囲の不適切な対応や反応がいらだち、不安を増幅させてしまいます。それよりも近所の人や知人に理解しいていただきフォローしていただいた方が安心した気分になるのではないでしょうか。
理解者が増えることによって今までより介護が楽になります。また、ご主人が認知症という病気を理解することによって対応方法が変わってくると不安がなく落ち着いた生活ができるようになります。
最近では、認知症に対しての情報が沢山ありますが、もう一度一般論を整理してみましょう。
・記憶に関しては、ご飯をたべたことを全部忘れてしまうような記憶の全体的欠落
・認知・理解・判断力に関しては、何時であるか時計を見て読むことが出来るが、その時間に自分が何をすればよいのかがわからない。
・買い物に行って何をどのくらい買ってよいのかわからない。
・同じ事を何度も繰り返し聞く。
・自己抑制力に関しては、自分の感情をコントロールすることが出来ない。
・計算力などの知的機能に関しては、買い物をしてもいくら払えばよいかわからず、大きなお金を出しておつりをもらい、つり銭があっているのかわからない。
以上のようなことが起こってきます。これらが日々の生活をしていく上で、今までであればスムーズにできていたことを妨げてしまうのです。
つじつまが合わない言動に、周りは度忘れ位に思っているが、繰り返し同じような状況になり、ご主人としてはついつい大声を出してしまう気持は良くわかります。また、毎日同じことの連続にストレスがたまってしまうことでしょう。
近所の人や知人は外見は変化がない状況なのに「おかしいなー」と思っています。奥様を見る目が何となく違っていてその雰囲気を奥様は敏感に感じ取ります。そしてプライドが傷つくのです。周囲の不適切な対応や反応が不安や苛立ち、戸惑いを増幅させてしまうのです。それよりも近所の人や知人に話し、理解していただいた方がずっと気分も楽になり、安心した気分にもなります。状況を話すことは辛いことでしょうが、勇気をもって伝えてみてください。(目次に戻る)
A:認知症が進行してくると独語を多く喋られる方をみかけます。寝ようと思っても独語が気になって眠れず、慢性的に睡眠不足になり疲労がたまってしまいますね。認知症専門の医師に診てもらい、介護保険等のサービスや情報を上手に活用しましょう。
「静かにして」といってもその場限りになってしまうか、逆に言ったことがきっかけになって不穏になってしまうこともあるでしょう。ときどきであればやむを得ないと思う気持になるでしょうが、頻繁になってくると、「また今夜も」と思うだけでよけいにストレスとなり、なんでもないときでも耳にこびりついて、言ってもいないのに聞こえるような気になってしまうこともあるでしょう。
ぶつぶつ言う状態は「せん妄」といって、軽い意識混濁に記憶障害、見当識障害、知覚異常などが加わって起こります。特に夜間に起こる(夜間せん妄)ことが多く、数時間から数日間続くこともあります。認知症ではよくみられる症状ですが、いくら理論的にわかっていても、一緒に生活している人にとってはたまらない状況ですよね。夜間眠れるように、日中体を動かしたり、気分転換を図るように工夫しておられても、独りごとが続くのですから大変でしょう。
認知症専門の医師に診てもらっているでしょうか。まだ診てもらっていないようでしたら、今後のこともありますので適切なアドバイスを受けたり状態によっては薬も必要かと思われます。是非診察を受けられることをお勧めします。自分たちだけで抱え込まずにいろいろな社会資源を上手に使いましょう。
夜間ぶつぶつっているときは、手を握ったり温かい飲み物(ホットミルク)や軽い食べ物を口に入れてあげるのもいいと思います。夜間だから眠らなければならない概念を捨て、落ち着かない現状を和らげる為にはどうしたらよいかを優先して考えましょう。ご本人も眠れず疲労の原因にもなると思います。共倒れにならないように、デイサービスに行っている時間だけでも、介護者であるあなたがリラックスできる時間や趣味に集中できる時間を確保していきましょう。自分の気持にゆとりがもてるとご本人さんの症状の緩和にもつながってきます。(目次に戻る)
A:まず、現在何らかの在宅サービスを受けているのであれば、そのサービス提供者やケアマネージャーに聞いてみてください。現在往診を受けているのであれば、開業医の医師に、訪問看護を受けているのであれば訪問看護師に相談してください。それらの専門家が施設を教えてくれるか、または、適切なほかの専門家を紹介してくれると思います。
そのようなサービスを受けていない場合には、地域の在宅介護支援センターや市町村の老人福祉課、福祉事務所に相談してみてください。介護保険課には『介護保険事業者ガイドブック』が置いてあります。そこに電話番号や住所が記載されています。電話番号案内に聞いても教えてくれます。また、インターネットからも検索できます。介護保険関係をクリックしても見れますし、ワムネットから介護事業者情報を検索し探すこともできます。
しかし、どのような方法で調べられても、お勧めの施設などは示されていません。
あくまでもお母さんにあった施設をご自分の足で情報を聞き出し、自己負担などの詳細をキャッチして下さい。あなたの目で確認されることが大切です。確かにこうしたことには、相当の苦労が必要になりますが、それに見合うだけの価値は必ずあります。また、知人が推薦される施設にもぜひ足をお運びください。利用者さんたちが生き生きと生活をされているか、独りぼっちでポツンとされている人はいないか、スタッフの動きを観察してください。
優れた施設は入院・入所するまでの待機待ちに時間がかかります。できるだけ早く計画を立てましょう!
※静岡市内の認知症受入施設のご相談は、施設紹介のプロ・(株)エムウィンドでもご相談を受け付けています。(相談無料)
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A:名称はさまざまですが、アルツハイマー病をはじめとする認知症疾患を専門的に診断し治療するための外来だとお考えください。施設ごとにその内容は異なりますが、一般的には専門の医師、看護師、臨床心理士、作業療法士、そしてソーシャルワーカーといった職種の人たちが勤務しています。
もしこうした専門外来にいらっしゃれば、担当医はご主人の様子の概略について、ご主人とあなたからお話を聞くことと思います。又、臨床心理士はご主人にいくつかのテストを行い作業療法士はご主人の家事など、日常生活上に関する能力を評価するはずです。さらにソーシャルワーカーはアルツハイマー病によって生じる問題にどう対処していくかに対して有用な情報を教えてくれると思います。
こうした薬剤の効果を臨床的に確かめることを、「臨床治験」といいますが、臨床治験を行なう専門外来も出てきています。このようなところで多くの検査をして確実に診断してもらうのはもちろんですが、一方で地元のサービス福祉機関に連絡を取ることも忘れてはなりません。今のところ「物忘れ外来」のような専門外来はそうたくさんはありません。もし遠方の専門外来に通われるとしても、あなたの居住地のサービス機関とも連携の必要があります。この点についてかかりつけの医師にご相談ください。(目次に戻る)
A:施設にもこのような利用者さんがおります。あまり頻繁に起こると周りの利用者さんも巻き込みトラブルになりかねませんし、スタッフもストレスが溜まってしまいます。私たちプロでさえ大変なのですから、さぞお困りののことでしょう。落ち着きのなさは、アルツハイマー病やレビー小体病、脳血管性認知症の利用者さんによくみかける症状です。あらかじめ避けることができるものもありますので参考にしてみてください。
突然、落ち着きがなくなってくるとき、それが苦痛や不快感から生じている可能性があります。歯痛は苦痛の一般的な原因ですから、歯は絶えず調べてもらい処置しておきましょう。また、消化不良や便秘のような消化器系の問題も、よく苦痛や不快感をもたらします。しかし、これも食事に気よつけていれば避けることができる場合があります。食物繊維の多いものやビタミン類の多く含んでいる果物や野菜を十分摂りましょう。
また、膀胱が尿でいっぱいになると、落ち着きがなくなる場合がとても多いのです。もし尿が出にくくなっているようでしたら、尿路感染症を起こしているかもしれません。または、前立腺肥大症のサインかもしれませんので、治療を受けてください。
ご主人が飲んでいる薬は、どんなものでも落ち着きをなくさせる原因になりかねます。ですから、医師に相談して減らせる薬があるか、やめてよい薬があるかどうか、検討してもらうことが必要です。紅茶やコーヒーなどカフェインの強い飲み物も、落ち着きをなくさせたり、興奮状態を引き起こし、それらをいっそう悪化させます。
他にに考えられることとしては、退屈するから落ち着きがなくなる場合があります。そういう時施設のスタッフは、仕事探しを始めます。役割を持っていただくことで落ち着いてくる場合があります。ご主人にもそれまで以上の活動の場を見つけてあげるとよいでしょう。
突然落ち着きがなくなっても、散歩に連れ出したり、何か身体を使うことをさせてあげると症状がなくなる場合があります。認知症が進行するにつれコミュニケーションが困難になってきます。自分の言いたいことが言えなくなり、イライラする場合が多くなります。このようなことをしてもうまくいかないときには、ご主人が不安にかられ気が動転しているためかもしれません。そのようなときには何度も抱きしめてあげたり、しばらくの間ご主人のそばに寄り添って、手を握ったり、本を読んであげたリするとよいでしょう。(目次に戻る)
A:私たちも、日常の生活の中で体調が悪かったり、仕事がうまくいかなくなると、憂うつな気持ちになりますが、普通なら1~2日くらいで気分は元にに戻ってきます。それに対してうつ気分が1週間も2週間も続くのがうつ病です。うつ病はもともと認知機能の病気ではなく、感情の病気です。
うつ病の症状には①.うつ気分②.意欲の低下③.身体的症状に分けられます。
(長谷川和夫 認知症知りたいことガイドブックより)
第1は、うつ気分です。何をしても面白くない。不安で淋しい。そして、暗い気持ちが続いて悲観的な思いにとらわれ死にたくなります。
第2は、意欲の低下です。何事にもやる気をなくして、おっくうになります。注意力が低下するとともに、考えもまとまらず、決めることが難しくなります。その状態はまるで認知症のように見えてしまいます。
第3は、身体的な症状です。頭痛や頭重感、肩こり、不眠、食欲不振、便秘などが起こり、体重も減ってきます。
ただし、これらの3つの症状は、常に全部あるわけではなく、個人差や経過によっても変わります。
うつ病が治ると、この認知症に似た症状は消失するため、それを一過性の認知症とか仮性認知症とかいいます。この仮性認知症と本物の認知症とを間違えないようにしないと大変です。うつ病の場合は生きていくことに空しさを感じ、死にたくなって、自殺する可能性があります。しかもうつ病は抗うつ薬等の薬物療法で直すことができるのですから、この両者をきちんと判別することが重要です。
<仮性認知症と本物の認知症を見分けるポイント>
うつ病の場合は、口数が少なく、日常の生活において行動量が少なくなり、外出や人に合うことを避けるようになります。また、悲観的で愚痴っぽくなり、「あんなことをしなければよかった」などと自分を責めたり、過去のことをくよくよ悩んだりします。その他、からだの不調をやたらと訴えます。
「肩がこる」「便秘がひどい」「疲れやすい」「眠れない」「胃腸の具合が悪い」「食欲がない」などと、暗い表情をしてくどくどとぼそぼそ繰り返すのが特徴です。
それに対して本物の認知症の人はよく喋るし、がっくりもしていません。むしろ元気そのもので、身体の不調を訴えることもなく、「どこも悪くない」と主張します。突拍子もないことを言いますが、くどくどとは言いません。そういうところが大きく違うのです。
それにうつ病は、配偶者を亡くすとか、大切にしていた陶器を壊されたとか、かわいがっていたペットが死んだというような喪失体験(事件)に引き続いて起こるケースが多いのです。お年寄りが丹精こめて手入れしてしていた盆栽を、ある夜、酔っ払いが庭に入ってきてむちゃくちゃに壊してしまい、それをきっかけに翌日からうつ病になってしまったという例もあります。
特にお年寄りの場合、短い期間にこうした喪失体験が1つだけでなく、いくつも重なって起こることがあります。定年退職で社会的な役割を失った、身体の調子がどうも悪い、仲の良かった友人が亡くなった、老後の収入としてあてにしていたアパートの経営が不景気でうまくいかなくなった・・・。このような体験が重なり合い、それをきっかけにしてうつ状態を起こすことがしばしばあります。(目次に戻る)
A:認知症への対応は、その第一歩として早期診断・早期発見が大切になります。そのためには、一定の基準・スケールが求められます。これまで多くのスケールが開発されてきましたが、中でも1974年につくられた長谷川式簡易スケールは最も広く用いられてきました。1991年に改定された後現在は「長谷川式認知症スケール」(HDSR)と呼ばれています。内容は主に記憶に関係した質問で構成され、全部で9問あります。
<実施の方法>
設問 1
ご自分の年齢を答えてもらいます。
正答に対し1点があたえられます。
設問 2
年・月・日・曜日それぞれにつき正答すると
1点づつ与えられます(合計4点)
設問 3
現在いる場所がどういうところであるかがとらえられていたら正答とします
(2点)もし正答が出ないときはヒントを提供します。「自宅ですか?」「病院ですか?」などと問い、正しい選択ができれば1点が与えられます。
設問 4
3つの言葉を復唱してもらいます。2つの系列(パターン)が用意されていますが、1つの系列をまず用います。(比較的短い期間に連続して行なうときは、練習効果を避けるため、も委一方の系列を用います)
1つの言葉に1点が与えられます。正解できない場合は、正答な数を採点した後、正しい答えを教え覚えてもらいます。
設問 5
100から7を連続で2回引いていきます。「100から7を引くといくつ?」次に」それから7を引くといくつ?」というように訊いていきます。
その場合、検査者は最初の答えを口に出さないことです。もし、最初の答えが間違っていたときにはそこで中止し、次の設問6へ進みます。
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A:長谷川式認知症スケールは全部で9問あります。映画「明日の記憶」にも長谷川式認知症スケールが出てきました。
設問 6
数字の逆唱です。3桁と4桁の2問で、正答に対し各1点が与えられます。
3桁の逆唱に失敗した場合は、そこで中止し次の設問7へ進みます。
設問 7
(設問4で言った)3つの言葉の想起です。「先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください」と問い、3つの言葉の中で自発的に答えられたものがあれば各2点が与えられます。
想起できない言葉があった場合、少し間隔をおいてからヒントを提供し、正答が言えれば1点を与えます。例えば「桜」と「電車」が想起できなかった場合、「一つは植物でしたね」というヒントを与え、正答が言えれば1点。その後、「もう一つは乗り物がありましたね」というヒントを与えます。ヒントは被検者の反応を見ながら1つずつ提示し、「食物と乗り物がありましたね」というように、続けてヒントを出さないようにします。
設問 8
5つの物品記銘です。「これから5つの物品を見せます。それを隠しますので、何があったのか言ってください」と伝えます。時計、カギ、歯ブラシ、ペン、クシなどの物品を用意し、「これは?・・・時計ですね。これは?・・・カギですね。これは?」というように物品名を1つずつ確認しながら掲示します。
この後、「では、これらのものを隠しますので、ここにあったものをもう一度言ってみてください。順番はどうでもかまいません」と言って、それらの物品を隠します。各正答に対して、それぞれ1点が与えられます。
設問 9
「知っている野菜の名前をできるだけたくさん言ってみてください」と質問します。具体的な野菜の名前を検査用紙の記入欄に記入していきます。重視したものは採点しないように注意します。
この問題は言語の流暢さを見るための質問であり、途中で詰まり10秒程度まっても次の名前が出てこない場合、そこで打ち切ります。採点は5個までは0点、6個は1点、7個は2点、8個は3点、9個は4点、10個は5点。
<判定の基準>
設問ごとの得点を加算して総得点とします。満点は30点で、20点以下の場合に認知症の疑いがあると評価します。実施にあたっては十分に説明をすること、そしてテストを受けることの了解をとることが大切です。例えば、「物忘れテストですが、短い時間ですみますのでお願いできませんか」など。
長谷川式認知症スケールは、あくまで簡単な知能検査であって、これだけで認知症と診断することはできません。例えば検査を受けるお年寄りが感冒やうつ状態など心身が不調なときには、本来の知能より点数が低くなります。また、検査に対するお年寄りの協力度によっても左右されます。あくまでも補助的な検査であることを承知してほしいです。(目次に戻る)
A:口腔ケアで誤嚥性肺炎の予防をしましょう。高齢者や免疫力が低下している人が、口腔内を不潔な状態にしておくと、口腔内の細菌が気管に入り増殖し感染を起こし、誤嚥性肺炎になることが多いいのです。特に寝たきりの介護が必要なご質問者の場合は、誤嚥性肺炎になりやすく、結果的に命に関わることもまれではありません。
ご自身で歯ブラシのできる方は誤嚥性肺炎にはなりにくいのですが、寝たきりなどで、ご自身で口腔内の清掃が不可能の方の場合は、周囲の人による協力が必須です。
理想的には訪問診療を実施している歯医者さんに来てもらって、定期的な口腔ケア、歯周病や虫歯の治療、入れ歯の治療をしてもらい、毎日の口腔ケアについても指導してもらうのも良いでしょう。
身内の方などによる毎日の口腔ケアの方法を簡単に説明しましょう。可能なら状態をベッドから起こした姿勢で行ないます。無理なら首だけ横に向けて、行ないます。入れ歯があれば必ず外してください。入れ歯がお口に入っているときれいに口腔内を清掃できません。
やわらかめの歯ブラシで、歯と歯肉の境目を中心に、歯肉をマッサージするつもりで、ブラッシングしてください。歯磨き粉は毎回しようする必要はありません。歯と歯の隙間は歯ブラシで清掃できないので歯間ブラシを使用してください。ブラッシング後はブクブクうがいをしますが、できればイソジンなどで薄めたお水ですすぐとより良いでしょう。また、外して入れ歯は流水で入れ歯専用のブラシを使って、ジャブジャブ洗ってください。
口腔ケアを行なうことは誤嚥性肺炎を予防するだけでなくご本人のQOL(生活の質)を向上させることにつながります。アイスマーサージもお勧めです。綿棒の大きいもの(メインディップ)をぬらして凍らせたもので、口腔内の上顎や頬、舌などをマッサージしながら刺激しますと、唾液の分泌が良くなり、食べ物を飲み込むときの助けになります。唾液の効果は殺菌作用や食べ物の消化を助けたり嚥下をしやすくさせます。メインディップやうがい用イソジンはは薬局で購入することができます。一度お試しください。(目次に戻る)
A:あなたはすでに十分に長い間、奥様の介護をしてこられました。そして又奥様を愛し続け、他の誰よりも奥様のことを分かっていると思います。いっぺんに離れるのではなく、ショートなどを利用しながら、徐々に施設入所の方向へ考えられたらいかがでしょうか。在宅サービスを支援する小規模多機能型居宅サービスもあります。
きっとあなたは、最後まで介護しつづけることができるのだろうかと、ずっと考えてこられたのだと思います。不幸なことに、アルツハイマー病の人を介護することは24時間介護に従事することになります。誰からの援助もなく介護しつづけることは、どんな人にとっても正常な状態ではありません。
すでにあなたは色々な介護保険サービスをお使いになっていたり、地域の家族会等から支援を受けてきていることでしょう。しかし、それだけでは十分な救いになりえないときがやってくるのです。例えば施設のショートステイなどを利用し短期間でも滞在させるようにしたり、上記で述べた小規模多機能型居宅介護のサービスを利用されると良いと思います。
小規模多機能は可能な限り在宅で暮らすことを支えます。「思い」や「願い」を大切にします。自宅に24時間・365日の安心をお届けします。介護の困ったにお答えします。「通い」「宿泊」「訪問」を使って柔軟に支えます。
奥様が施設入所されても、食事の介助をしたり、手足を洗ったり、気分転換に散歩に出かけることもできます。これからも十分に奥様に尽くすことができます。施設の職員と相談して妻にどんな手伝いをしたら喜んでもらえるか、たずねると教えてくれると思います。あなたの罪悪感の軽減につながると思います。(目次に戻る)
A:従来の研究から、たいていの人はどこが悪いのかについて本当のことを知りたいものだという結果が出ています。また最近では、たとえ認知症であっても、自分の診断については知る権利があるという考え方が広まりつつあります。このような考え方に賛成されるか否か、また診断を知ることで奥さんに益があるとお考えになるか否かは個人個人の置かれた状況次第かと思います。
私の場合だったら、どうでしょう。おき変えて考えて見ます。こういう仕事をやっているからいえるのかも知れませんが、今は早期発見早期治療の時代です。病気と分かって早期に治療(デイサービスなど)を開始することによって進行を遅らすことができます。それには自分自身の病気について知る(告知)ことの必要性を痛感しています。積極的に脳を刺激することによって自分のやる気がプラスの効果として現れます。ですので告知には賛成です。
おそらくあなたは奥さんのことをだれよりも良く分かっていらっしゃるでしょうから、もしあなたが診断を告げたなら、奥さんがどのような反応をされるか予想がつくことでしょう。またすでに認知症が相当進んでいるのなら、診断を告げることはさほど意味がないかもしれません。しかしあなたがたとえそのように判断されても、奥さんは告げられたことを想像以上に理解され、そのことが役立つとも考えられます。
もし奥さんが診断を知りたいと思っておられるが、あなた自身が話す気になれないということであれば、あなたの同席のもとに主治医から話してもらってはいかがでしょうか。医師から、「あなたは記憶力に問題があり、これに対処していく必要がある」と説明されると、多くの人はそれを受け入れるものです。また本当の診断を教えてもらって、自分で判断できるうちに、今後の人生設計をしたいと考える人もおられます。(目次に戻る)
A:認知症の方が出歩く理由はさまざまです。何かしらの理由があります。認知症の人の外出には、多くの危険が伴います。事故に遭わないように出歩く理由を探ってみましょう。認知症の人の介護でもっとも苦労する行動の1つが「出歩く」ことです。よく観察してみると、認知症の人の外出には、様々な理由があるのが分かります。
●居心地が悪くて出歩く場合
家にいても、家族に非難されたり無視されるために、居心地が悪く家にいたくない(施設にいたくない)ために外へ出たくなるようです。これを防ぐには、安心して家(施設)にいられるようにすることが大切です。気持が和みここにいても良いと思えるように間違ったことをしても強く指摘せず、叱らないで下さい。一緒に寄り添い外出したり共に寄り添い外へ出たくなる気持の緩和を図ります。真夏や真冬は特に注意をはらいます。認知症の人が好きな話題を選んで話したり、聞いてみるのもよいでしょう。
●家にいるのに「家に帰る」という場合
認知症が進んで、過去に生きているような状態になると、現在住んでいる家が自分の家ではないように思え、生まれ育った家に帰ろうと、出歩くことがあります。「家に帰る」という場合は、いったん出かけてもらい、家族は後ろからついていって、疲れたところを見計らって「もう遅いので、私の家に泊まっていってください」などと声をかけると、一緒に帰ることがあります。
●「子供を迎えに行く」「会社に行く」と言う場合
過去に生きているような状態になると、「子供が小さいので心配だから迎えに行こうとしたり、まだ現役で働いていると思って出かけることが多いようです。「会社に行く」と言う場合は、「今日は休日で会社は休みです」と言うと、出かけなくなる場合があります。また「買い物に行く」「○○さんが呼んでいる(亡くなっている)」などということもあります。「後で一緒に買い物に行きましょう」「その人は亡くなられたと聞きましたが・・・」など、認知症の人の言葉を受け入れながら遠まわしに否定すると、納得して外出しないかもしれません。
このほかにも様々なケースがありますが、いずれにしても認知症の人の出歩く理由を理解しておく必要があります。「外出する」と言い張る場合は、まずその理由を聞きましょう。出歩くこと自体とめるのは難しいことですが、理由を知ることで、回数や時間を減らせるかもしれません。また、たとえ目的地に行ったとしても、帰り道が分からなくなることがあります。道路工事が始まったり、見慣れない大きな看板が立てられたりすると頭に描いている道と少しでも状況が異なると、いつもの道だと判断が出来なくなってしまいます。そうすると帰り道を探したりして、まちっがった方向に歩き、家にたどりつけなくなることがあります。
認知症の人の外出で家族がもっとも心配するのは、行方不明になったり、事故に遭ったりすることです。早く見つけるために紙に連絡先を書いてポケットに入れておいたり、衣類に氏名、住所、電話番号などを縫いつけておきます。
またGPSを利用したり民間サービスに登録し、利用することもお勧めです。
外出して一度でも行方不明になったことがある場合は、必ず、地元の交番や警察に出歩く可能性のある認知症の人のことを連絡しておいてください。その際には、認知症の人の氏名、年齢、性別、容姿の説明とともに、最近の顔写真(全身写真もあると良い)を添えておくといざという時、警察は発見しやすくなります。
また、外出を防ぐために玄関にセンサーをつけることを検討することも良いでしょう。認知症の人に分からないような鍵を玄関につけ、常時閉めておくようにするなどの方法もあります。安全のため必要な処置かもしれません。(目次に戻る)
A:当然の気持ちだと思います。姑が認知症になったからといって、急に気持ちを切り替えて介護できるものではありません。それが自分の本心であることを知りながらもできることから少しずつ変えていくようにしましょう。また、それに加え周辺症状が出現すると、ますます関係が悪化してしまいます。早めに認知症専門医に診てもらいましょう。
認知症の人の介護には、人間関係が強くからんでいます。舅は自分の行動や意思に関係なく、認知症という病気になってしまったのだと理解していても、その言動に振り回されてイライラしたり、過去の様々ないさかいが引っかかり、親身に介護ができない場合があるかもしれません。
互いに生身の人間ですから、割り切れない気持ちになってしまうのもあたりまえです。これからの認知症介護は早期発見・早期治療です。行動障害が活発に出てしまうと改善するのに大変です。抗精神薬が効果を発揮しますが、副作用も伴います。また、家庭内がしっくりいかなくなり、家族が疲弊します。ですからそうならないためにも早く治療が必要です。デイサービスへ早めに通うことが必要です。
認知症の舅は認知障害のために、自分の態度を改めて、世話をしてくれる嫁に感謝の気持ちを示そうというような理性的な考えは浮かびにくいでしょう。むしろ、「自分の弱点を知られたくない」「嫁に負けるか」といったプライドが強く出ることがあり、人間関係をますます難しくします。
一方嫁も優しく介護したいと思いながらも、毎日の舅の態度に過去の出来事が重なって、憎しみを感じるようになるかもしれません。自分の思いを語れる場「認知症の人と家族の会」が開催する家族の集いや介護経験者による電話相談で本音を語ってみましょう。同じような経験をした人はたくさんいますから、何かアドバイスをもらえるかもしれません。解決方法はないかも知れませんが自分のことを理解してくれたと実感するだけでもストレスが少なくなるでしょう。(目次に戻る)
(税理士 横田 崇氏より)
A:介護認定を受けた方の中で、障害者控除の対象となる場合があります。
Q:障害者控除とはどのようなもの?
A:本人または扶養親族の中に、所得税法上の障害者に該当する方がいる場合、所定の控除を受けられる制度のことです。
Q:障害者控除を受けられるか、どのように判断するの?
A:身体障害者福祉法等により、障害者手帳などの交付を受けている場合、障害者控除を受けられます。
Q:介護認定を受けている方は障害者控除を受けられるの?
A:税法上の障害者の条件には、介護認定は入っていません。したがって介護認定を受けているからといって、障害者控除を受けられるとは限らないのです。
Q:実態は同じような気がするのだけど...
A:そこで、寝たきりの状況にあって民生委員等の証明がある場合や、満65歳以上で障害の程度が所得税法の規定に順ずるものとして市町村等や福祉事務所長の認定を受けている場合は、障害者控除を受けることが出来ます。
Q:認定への手続きはどのようにしたらいいの?
A:お住まいの市区町村等で障害者控除認定書の交付を請求してください。市区町村等ではその要介護状態が障害者控除に該当するかどうか判定してくれます。判定されれば、障害者控除認定書を交付してくれますので、それを年末調整や確定申告の際に提出してください。
Q:判定基準はあるの?
A:これは自治体によって異なります。例えば、東京・世田谷区では、「要支援」でも内容次第で控除認定をしてくれる場合があります。お住まいの市役所等に問い合わせてみることをお勧めします。(目次に戻る)
A:若年性認知症は、40歳代から50歳代にかけて発症する病気です。主として若年期(初老期)に発症するアルツハイマー病を指します。前頭側頭型認知症(ピック病)、脳血管性認知症、頭部外傷、レビー小体病、アルコール性認知症など、他の原因も多くあります。
若年性認知症では、進行が速いこと、不随運動や失行、失語、失認が著しいこと、あるいは体力が保たれているので、行動障害が強く現れやすいなど、臨床症状の特徴があります。
また、何といっても、若年期というのは働き盛りの年齢ですから、病気になると家族への精神的・経済的な打撃が大きいことがあげられます。このため介護や福祉の支援がより必要です。
介護保険制度では若年性認知症は特定疾病に指定されています。40歳以上でも介護保険の利用が可能です。しかしながら、在宅あるいは施設サービスの多くは高齢の利用者で占められ、、若年の利用者にまでケアが行き届いていないことが大きな難点です。
また、働き盛りの時期に認知症を発症することで、仕事ができにくくなり、解雇されたり、自営業をやめざるをえなくなり、収入が減少して経済的に困窮することがあります。障害者年金などである程度の所得は保証されますが、収入が減少するため、子供が学校をやめて仕事につかなければならないことがあります。家計を支えるために仕事と介護の板ばさみで、苦しむ人も少なくありません。
成人前の子供にとって、認知症になった親の姿は理解しがたくつらいものです。それが原因で不登校や家出が起こる可能性もあります。また、若年性認知症の親がいることで、子供の結婚に影響するかも知れません。介護する家族は(特に夫や妻)は、若年性認知症の人と子供との関係に悩むことがあります。
「認知症の人と家族の会」などが、若年性認知症について取り組んでいます。家族のつどいに参加して、より具体的な介護の方法や関連する情報をえると良いでしょう。また家族の会では若年性認知症だけで取り組むつどいなどもあります。静岡県支部ではまだまだ遅れていますが、つどいに本人が出席したり本人同士が集まりお互いに話し合いを行なったこともあります。若年性認知症の方だけで行なうつどいも、我々家族の会の課題でもあります。
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A:認知症が原因で混乱し、感情的に不安定になって、周囲のものを壊すような行動をとることがあります。大声で止めたりするのではなく、静かに話しかけるようにしましょう。薬の服用で改善することがあります。
せん妄の世界に入り混乱している場合に見られます。自分で一生懸命治そうとしてかえってさらに裂いてしまったり、片付けようとおもってもさらにちらかしたりします。また、せん妄が出ているときは、危なくないようにしばらく落ち着くまで見守ります。長くは続きませんので落ち着いてきたら声を掛けます。危険なものは遠ざけておきます。
認知症が進み状況判断ができなくなると、なぜ自分がここにいるのか、周囲の人が誰なのか、思い迷う事が多くなります。また、周囲の人が助けてくれない、自分が孤立している、無視されているといった誤解が生じることもあります。こうしたことが重なると認知症の人は混乱しやすく不安定になり、落ち込んだり、興奮したりします。そして興奮が大きくなると、手近にある新聞紙や寝衣や枕カバーなど裂いたり破いたりします。また、手元にある皿を投げたりという「破壊的行動」をとるのです。
このときは、認知症の人自身も、何をしているのか分からなくなっています。破壊的行動は1回で治まるときもありますが、何度も繰り返すときもあります。こうした行動をとっている認知症の人に理由を聞いても返事はなく、やめるよう説得しても止めることは難しいでしょう。
無理に抱え込むなどしてやめさせても、認知症の人の気持ちは治まりませんので、同じことが繰り返されます。気分が落ち着くまで、やりたいようにさせておくしかありません。このようなことが起こりそうになったら、、周囲に壊したり、破いたりしてもよいものだけ置くようにし、壊しては困るものや危険なものは素早く隠してください。繰り返すようなら、日頃から片付けておくほうが良いでしょう。
破壊的な行動起こさないようにすることが大切ですが、何をきっかけに始まるのか理解できるとは限りません。しかし、後から考えてみると、家族の「おじいさん、またお漏らししたの?ダメねえ」と言う一言がきっかけになっていることもあります。認知症の人にストレスを与えないように心がけることで、破壊的な行動が減ることもあります。
破壊的行動を繰り返すようなら、少量の抗精神薬お服用してもらうことで防止できることもあります。医師に相談してみましょう。
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A:球根や生のジャガイモに歯型がついているのを見てびっくりするのと同時に驚かれたことでしょうね。想定外のことが起こることを理解していても、その現実に直面すると戸惑ったことでしょう。普段支えている自分の気持がくずれそうになったのはでないですか。そうなる前に何故気づかなかったのだろうか、仕事が忙しくて、もしかしたら、他にも気づかずにいる部分があるのではないだろうか・・・。など次々に不安と自分の至らなさが押し寄せてくることでしょう。でも球根や生のジャガイモは食べられないものであることが分かっていたのでしょう。今後安全に生活ができることを心がけていきましょう。
お母様の目線で危険なものがないか再点検してみましょう。見えるものは触ったり口に入れると考えて、手の届かないところに置くか、鍵をつけて開けられないようにしましょう。台所の洗剤や漂白剤など危険なものを再チェックしてください。何も置かないと逆に色々な場所を開けたりしてしまいますので、見える場所には、食べても良いもの置き、いつでも食べたいときに、食べられるように工夫しましょう。
仕事をやめて、お母様の介護に専念したいと思う気持はわかりますが、現在はお仕事をされているからこそ少し距離感があっていい関係が保たれているように思います。24時間ぴったりついて看ていても今回のようなことは起こると思います。お母様が仕事をやめて、介護されることを喜ぶでしょうか。自分は自分の生きかたを持たれたほうが良いように思うのですが・・・。お二人の生活に合うような在宅サービスをシュミレーションしてみましょう。一人で介護を抱えこまないようにしましょう。(目次に戻る)
A:認知症の人と話す場合には、余裕を持ってゆっくり話を聞く姿勢が大切です。言葉によらないコミュニケーションもあります。決して押しつけず、相手の思いを汲みとるように視線を合わせて受容、共感をしましょう。
人と人とのコミュニケーションには、言葉、文字、絵、ジェスチャー、表情、身体的な接触などの方法がありますが、通常は言葉によるコミュニケーションが中心です。認知症の人の場合も同じです。
認知症の程度にもよりますが、症状によっては、適切な言葉を失い、自分の言いたい事を伝えられなくなることがあります。自分の思いをうまく話せないと、イライラしたり落ちつかなくなるのは誰にでもあることですが、、特に認知症の人は暴力的になったり、ひどく落ち込んだりします。
そうならないために、聞き手として最も大切なのは、余裕をもつことです。話をせかせたり、さえぎったり、叱ったりせずに、まずは聞く姿勢を示しましょう。認知症の人と視線の高さをあわせ「ゆっくり聞いています」というメッセージを身体全体で伝えるようにしてください。すると、あせって出なかった言葉が出るようになったり、断片的でも会話が成立するようになります。
ときには、認知症の人の言葉を待っているだけでなく、「こういうことを言いたいのかも知れない」と推し量り、「少し寒いのね」とか「散歩に出かけたいのですか?」と言葉を補ったり、ヒントを与えて話の続きを促すようにしてみましょう。この場合もせかさず、問い詰めたりしないで、ゆっくり待つ姿勢でいましょう。また、相手の言葉を繰り返し、話の内容を確認しながら会話を進めることも有効です。
こちらから発する言葉は、短く簡潔にしましょう。命令口調で話したり、馬鹿にするような態度は、認知症の人の尊厳を傷つけ、おびえさせ、悲しい気持ちにさせてしまうので控えてください。
たとえ、認知症が進んでコミュニケーションがとれなくなっても、心は生きていることを忘れず、言葉によらないコミュニケーション、例えば手を握る、笑顔をみせる、好きな音楽を流すなどの「非言語的コミュニケーション」を活用しながら、和やかな雰囲気づくりを心がけましょう。
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A:認知症の人は、もの忘れや判断力の低下のため、ガスの消し忘れなど、火の不始末を起こしやすくなります。まず、どのようなものに注意しなければいけないのかを知り、適切な対応を考えましょう。
認知症が軽度でも、火の不始末を起こすことがあります。鍋を焦がすだけにとどまらず、台所でボヤを出すなど火事につながりかねない危険もあります。特に一人暮らしをしている認知症の人の家族にとっては、大きな心配事です。
●ガスコンロ
ガスコンロの火の不始末については、認知症の程度によって対応が異なります。時々鍋を焦がす程度であれば、台所の目につきやすいところに、「火の用心」と書いた紙を貼っておくだけで、効果があるかもしれません。それでも火の不始末があるときは、外からガス栓を止めてガスを使えないようにするか、直火を使わない電磁調理器(IHクッキングヒーター)に変えるとよいでしょう。
最も認知症の人にとってこうした新しい電化製品は使い方が分かりにくいので、出来るだけ操作が簡単なものを選び、一人で使えるかどうか確認しておく必要があります。火災報知機も設置するようにしましょう。
●仏壇のローソクは電灯式にしましょう。
●タバコ
認知症の人の火の不始末で、もう1つ心配なのがタバコです。タバコの火で畳やカーペットを焦がしてしまったり、火が消えたことを確かめずに捨てるといったことが、日常的に起こる可能性があります。寝タバコの問題もあります。いずれも言葉で注意しても効果はないでしょう。
タバコを取り上げても、すぐに新しいタバコを買うことができますし、ライターも容易に手に入ります。無理にタバコをやめさせるのではなく、家族の目の届くところでタバコを吸ってもらうのがよいかもしれません。灰皿は通常より大きな物にして水を張る、部屋の中に水の入ったバケツを置くなどするのもよいでしょう。
特に一人暮らしの方は大変です。火事でも起こしたら近隣に迷惑になりますし大事故になりかねません。少しずつ禁煙の方向にむかわせたいですね。しかし、それでも火の不始末に関する家族の心配は、なくならないかもしれません。(目次に戻る)
A:ご主人は従来適度な飲酒習慣をもっておられたようなので、これを続けられればそれが1番です。ただしアルコールと一緒に飲むと副作用を生じる薬もありますので担当の医師に相談してください。
ご主人の今の問題はおそらく、飲んでもすぐそれを忘れてもう1杯飲んでしまうということではないでしょうか。そうだとしたら、酒瓶に水を満たしておいたり、お金を持たせないようにしたり、近所の酒屋さんにご主人には酒類を売らないようにお願いしてください。そのかわりに夕食のときに限って1杯だけ飲ませてあげてください。
また、退屈ですることがないのでお酒を飲む人がいます。介護保険の手続きをしてデイサービスやショートステイなど利用するとよいと思います。何かご主人が興味を示すものを探してみましょう。奥様と一緒に楽しめるものを見つけたり、何かご主人に役割を持っていただくようにしましょう。
ノンアルコールのビールを使ってみてはいかがでしょうか。最初の1杯は本物のビールを飲ませ、2杯目からはノンアルコールビールに換えてみてください。多分気がつかずに飲まれると思います。ただの水よりはうまくいくかもしれません。
度が過ぎると暴言や暴力になるケースも少なくありません。またお年寄りに最も怖いのが脱水症です。
アルコール依存症の専門の病院外来に相談をお勧めします。(目次に戻る)
A:認知症の人は、状況を判断して自ら抑えながら性的な関心を満足させることができにくくなります。過剰な性的関心を示されるのは不快ですが、感情的になるのはよくありません。うまく拒むのがよいでしょう。
男性の認知症高齢者に見られるケースです。これは身体欲求のほかに、性に対するとらえ方の違いがあると考えられます。こうした性的関心が妻に向き、時に性交を求めることがあっても過剰だったり無理強いすることがなければ、特に問題にならないでしょう。しかし同居している息子の妻(嫁)に関心が向く場合も考えられ、胸や尻をさわる、入浴や着替えをのぞくといったことが起こります。
認知症になると状況を判断する力が低下し、してよいこと、してはならないことの判断ができにくくなり、欲求にしたがって行動してしまいます。倫理的観念や、状況判断抜きに、性的関心の向くままに行動するようです。(性的逸脱行為)
性的行動の対象は、身近な妻や嫁が多くなりますが、特に嫁が驚き、嫌悪し、拒絶するのは当然でしょう。頻繁にそのような行動をされると、家から出て行きたくもなります。しかし、実際にはそれもできず、認知症である義父の性的行動に向きあわなければなりません。だからといって事を荒立てると、義母や夫から「あなたがお父さんを誘惑した」などと言われ、理不尽な誤解を受けたり、とり返しのつかないことにもなりかねません。
胸を触られたら、軽く手を握り返し、「お父さんそんなことをしてはいけませんよ」とやんわり注意するのもよいでしょう。入浴しているのをのぞかれた場合も同じようにたしなめて、浴室に鍵をかけるようにしましょう。認知症の義父自身も何となく悪いと思いつつ、そのような行動をとっていることもあるので、1回だけでしなくなることが多いようです。それでもやめない場合は、「認知症電話相談(コールセンター)」などに相談してみましょう。
妻が性交を求められたときも、困惑したり不快に思ったりするでしょう。しかし、そうした行為は実際に可能なことは少なく、軽く拒んで気をそらせたり、夫の性器を軽く握る程度で満足することが多いようです。また、認知症の男性が家族の前などで性器を出したりさわったりする行為も、家族を困惑させる性的な不適切な行動の1つです。認知症になる前は、癖で陰部をいじることがあっても、人前では自制していたはずです。それが認知症になったため、状況判断ができにくくなり、思うままに行動してしまうようです。
こうした行為はデイサービスやショートステイを利用しているときに起こることもあります。報告を受けた家族は、困惑し恥ずかしく思うでしょうが、こうした行為に似た些細なしぐさに気付いて、不適切な行為が大きくならないうちに注意することは可能でしょう。認知症の人にとっては、積極的な意図はなく、何気なく行なっていることが多いので、「おじいさん、こんなところで何をしているのですか?」と軽くたしなめることで、治まることもあります。また、それらしい行為が始まったときには、別な場所につれていくのもよい方法かも知れません。
こうした行為は一日中何もすることなく暮らしている認知症の人に現れることが多いようです。認知症の程度にもよりますが、認知症の人にもできることは多く残っていますので、部屋の掃除、料理の手伝い、食卓の片付け、昔の思い出を語ってもらうなど、残った機能を生かすような生活を送ることで、性器をいじったり、出したりという行為は少なくなります。(目次に戻る)
A:介護支援専門員としてもそのような家族の悩みに答えられるような指導法を持つことが必要です。スムーズな受診のためのコツをまとめると次のようになります。
●「もの忘れ外来」「老年科」「診療内科」「神経内科」などのある病院で、まず一般的な健康診断を実施して、その延長として認知症の受診に移行する。
●介護者が「私の健康診断に付き合って下さい」とお願いする。
●病院が嫌だという場合には、保健所では老人保健相談をしていることが多いので、「保健所に健康診断に行きましょう」と誘う。
●信頼を持っているかかりつけ医に「知り合いのよい先生を紹介しましょう」と専門医へ受診をすすめてもらう。
●頭痛、だるさ、腹痛などの身体症状を訴えるときには受診を納得させやすい。
●日ごろ顔を合わせない息子や娘、ヘルパーやケアマネージャー、保健所のソーシャルワーカー、などに付き添ってもらう。
●付き添いは二人がよい。受診手続きや順番待ちのとき、一人が相手をしていられる。
●受診の日を早くから言わないで、当日さりげなく言う。
結局、「ドラマ仕立て」で、受診に持っていくことが有効な方法といえます。(目次に戻る)
A:長年一緒に暮らしていると、日々の暮らしが連続しているため、変化があっても年を重ねると、こんなこともあるのだろうと、たとえ不都合なことがあっても容認してしまいがちです。それは夫であるあなたが優しく、少々味付けが変と思っても、たまたま失敗したのだろうと思ってしまいますよね。そして、妻の失敗を寛大に受け入れてしまうようです。またそのことが妻の変化を大きな変化にせずにいたのでしょう。叱責せずに対応されていたことに頭が下がります。しかし、認知症という病気もあります。気がかりになったことが次のステップにつながるチャンスだと思って先ずは受診してみましょう。
お子様たちが「お母さんの味付けは変だ」と言ったり、煮物を焦がすこと、火をつけずに鍋をかけることは、客観的に見ても、以前の妻に変化があると判断できるのではないでしょうか。年を重ねるにつれ物忘れはあるものの、今まで続けてきた日常生活は支障なくできるものです。支障が出てきたということは何らかの変化が、脳の中に出てきたと考えられます。認知する機能が低下して今までできたことができなくなったためだと思われます。
一緒に生活していると、お互いに助け合い、補完してきたため不都合が生じなかったのでしょうが、改めて生活を振り返ってみてはいかがでしょうか。朝起きたときの様子はどうですか。朝食の準備、後片付け、家の中の整理整頓、買い物、身の回りのことなど、面倒だからということではなく、何か以前と比べて緩慢になっていませんか。それと会話や表情はいかがですか。何か不安そうな表情をしていませんか。頭が痛いなど身体的な症状を訴えることはありませんか。
また、同じことを何回も聞いたりしていませんか。直前の出来事を忘れることが多くなっていませんか。そっと様子を見て下さい。おかしな言動があったときはメモをを残しておきましょう。そして、一度専門の医師に診てもらいましょう。そのような時、メモは医師や介護保険を利用する時に多いに役に立ちます。そして介護保険の制度も学んでみてください。お近くに包括支援センターはありますか。居宅介護支援事業所はありますか。ケアマネージャーさんに相談してみましょう。
一人で抱えこまないようにしましょう。色々な介護保険のサービスがありますので、良い機会だと思って、これからの暮らし方を探ってみてください。サービスを受ける受身ではなく、自分らしい生活ができるように、自分達で考えたり、選択したり、また、家族の会などに相談してみてください。吐き出すことによって、色々なアドバイスを受けることができます。(目次に戻る)
A:当初はお父さんの住んでいらっしゃる地域の施設数が十分といえないことも考えられますので、ともかく入れるところに入るということになりかねません。しかし、選べると仮定してお話すれば、先ずその施設が認知症の方を受け入れてくれるかどうかお知りになり、次に処遇方針や、ケアプランを聞いてください。具体的なご質問には、お父さんの主治医や専門医、ソーシャルワーカーや訪問看護師や介護支援専門員が相談に応じてくれます。
そうしたことで候補となる介護施設が分かったら、サービス内容や料金、また何より空きがあるかどうか問い合わせるか、ソーシャルワーカーや介護支援専門員に尋ねてもらってください。たいていの施設は説明用のパンフレットを送ってくれますがご自分の目で施設を見学されることをお勧めします。
もし可能ならば候補施設を全て見て回られた上でお決め下さい。仮に説明の上ではサービス内容が同じように見えても、実際の雰囲気が相当異なることがざらにあります。さらにある程度候補が限定されたならば、施設訪問の際にお父さんを同伴してください。お父さんの好みを尊重してあげることは当然ですから。
ところで施設選びのポイントですが、先ず注意深く観察し、たくさんの質問をするのが基本です。責任者とのお話はもとより、職員とも出来る限り話してください。高齢者とくに認知症の介護について、どれくらいの知識があるのかをあなた自身が評価してみることが一番いいでしょう。また、既に入居されている方やそのご家族に介護内容についてお尋ねになってみることもポイントとなるでしょう。
具体的に次のような質問したり、見てみるのがよいでしょう。
・住所はどこですか。そこは訪問の際に足の便が良いところですか。
・屋外に出て過ごす場所がありますか。日課として過ごす場所がありますか。
・散歩できる庭がありますか。
・親しみやすく家庭的な雰囲気ですか。
・家具や調度はそろっていますか。
・居室の数は十分ですか。
・内部は清潔で臭いはありませんか。(尿臭などがあるようではいけません)
・(喫煙者の場合)喫煙は許可されていますか。
・計画的なスケジュールが組まれていますか。
・椅子はどのように配置されていますか。テレビがつけっぱなしにされていませんか。
・車椅子や歩行補助具は備えてありますか。トイレや浴室は適切な配置、構造になっていますか。
・どのような部屋が選べますか。
・個人の家具や所持品が持ち込めますか。
・職員はプライバシーの保護に心を配っていますか。
・全ての入所者にふさわしいトイレの数や浴室がありますか。
・排泄や入浴の祭、職員は臨機応変にまた敬意を払って介助していますか。
・出される食事はどうでしょうか。味付けや栄養面はいかがでしょうか。食事は好みの時間に出来ますか。
症状に応じた特別食は出来ますか。(何をいつ食べるかはQOLの重要な要因です)
・望めば自分の居室で食事ができますか。自宅のように好きなときに、おやつなどを食べてもかまいませんか。
・医療に関する備えはどうなっていますか。
・歯医者さんについてはいかがでしょうか。(目次に戻る)
A:これまでの本人の変化、生活状況などメモをしておきましょう。現在治療を受けている病気についても情報が必要です。服用している薬があれば、その説明書も用意しておきましょう。
認知症の診断で最も大切なことは、もの忘れや認知機能の障害がどのように起こり、現在どのような状態であるかを知ることです。いくら認知症の専門医でも、診察室で短時間にすべてを知ることはできません。初対面の医師が本人からさまざまな情報を聴き取るのはとても難しいことです。そのため同居している家族がメモにまとめておくと診察時にとても役に立ちます。メモは時系列に沿って、次のようにまとめるとよいでしょう。
1.これまでの経過
▲もの忘れはいつから、どのように始まったのか?突然始まったのか?
▲もの忘れについては、本人から話はじめたのか?家族が最初におかしいと気づいたのか?
▲もの忘れがどのように進んできたのか?あるいは進んではいないのか?
2.現在の状態
▲毎日に生活や仕事はほぼ自分でできているか?見守りが必要か?もっと支えが必要か?
▲トイレは自分ですませているか?下着を汚すことが多いか?お漏らしが多いか?
▲買い物に一人で行けるか?必要のないものを買うことが多いか?お金をきちんと払えるか?
▲遠くに外出しても家に帰れるか?近くで道に迷うことはないか?
▲通帳や年金の管理ができるか?お金に強い執着を持っていないか?
▲気持ちが落ち込むようなことはないか?
3.既往歴
▲これまでにどのような病気をしたか(手術を含む)?
▲頭の怪我をしたことはないか?
▲現在、治療を受けている病気はあるか?(高血圧、糖尿病、高脂血症、心臓疾患など)?
▲病状と服用している薬について
些細なことでも、病気の大切な徴候だったりするので、日ごろから状態や気になる点を細かくメモしてあると診断に役立ちます。服用している薬については、保険薬局などで渡される「薬一覧表」や「お薬手帳」を持っていくと良いでしょう。現物を持っていってもかまいません。
*これらのメモは後々とても役に立ちます。保管しておきましょう。(介護保険認定調査や施設やデイサービスなど利用時)(目次に戻る)
A:アルツハイマー病では特に尿失禁がよく見られます。尿が急に近くなった場合や血尿が出た場合は膀胱炎を疑います。尿の検査をすると(検尿)よりはっきりします。それ以外の失禁の場合は認知症という病気によっておこる場合が多いです。その方に合った排泄パターンを知ることで尿誘導の仕方を工夫します。
規則的な排尿の習慣をつけましょう。まず、起床の直後、日中は2~3間時間もてばその時間帯に、最後は就寝前に誘導します。こうして膀胱の中に尿が残らないようにすれば失禁が減るはずです。また、奥様の尿意を感じておられるサインを把握しましょう。そわそわして歩きだしたり、股間に手を当てたりするのがサインかも知れません。それらを察知したらすぐにトイレに誘って下さい。
また、一番困るのは濡れた下着を隠そうと、タンスの奥の方にしまいこんでしまうことです。尿失禁の原因で多いのはトイレの場所が分からないのかもしれません。また、ズボンや下着の下げ方が分からなかったり、便器への座り方が分からないのかもしれません。また、よく見かける光景としてトイレットペーパーを股にはさむ習慣です。そのような時は尿取りパットを替わりにあててみましょう。尿取りパットは色々なな種類があります。ちびる程度であれば、生理用ナプキンで代用できます。
尿取りパットはある程度までの尿なら吸収しますから外出の際には便利です。奥様が座る椅子や座席のシートに防水シーツなどを備えるのも良いでしょう。失禁に対処することは容易ではありません。失禁してしまったことに、ついつい怒ってしまうこともあるかもしれません。しかし叱責すると奥様とのコミュニケーションをとるるのが難しくなります。反って怖いご主人のイメージが強く脳裏に残ってしまい、ますます尿失禁の回数が増えるかもしれません。さりげなくできなくなったことをフォローするようにしましょう。そして、相談にのってくれる方を探しましょう。ケアマネージャー、訪問看護師、泌尿器科の医師、主治医などが相談にのってくれるはずです。(目次に戻る)
A:認知症にかかった多くの方は薬を飲むのをいやがります。その理由の1つとして、まず、自分が病気であるという認識がないことです。認知症が進行すると咀嚼や飲み込みの障害により薬も飲みにくくなるようです。かかりつけの医師に相談しましょう。
服用されている個々の薬剤は何なのか。また、どの薬剤が特に重要なのか医師は教えてくれるはずです。また、どうしても飲まなければならない薬をしぼってもらいましよう。また、薬の副作用も理解しておきましょう。薬を飲むと気持ちがわるくなるので飲まない方もいます。注射や貼り薬に変えてもらえるか聞いてみましょう。
医師と相談して、飲みやすい剤型にしてもらいましょう。ゼリーと一緒につるんと飲んでもらったり、シロップや粉薬に変えてもらうのもお勧めします。ポテトサラダやツナサラダに混ぜて服用したり、苦味の強い薬は糖衣錠やカプセルにすれば苦味が感じなくなります。粉にしてシロップや砂糖と混ぜれば飲みやすくなります。
色々工夫をして飲んでいただくには、時には演技も必要になることもあるでしょう。薬には副作用がつきものです。お薬の内容を薬剤師に聞いたり薬の説明書をしっかり読むことも大切です。(目次に戻る)
A:パーソンセンタードケアは1990年代初めに故トム・キッドウッドが認知症ケアにおける魅力的な論文を書き、世界的に注目をあびました。その理由は認知症の方が示す行動は何もかも病気のせいにされていたのですが、キッドウッドは問題を提起し注目を浴びました。
認知症の方が脳が侵されて様々な知的能力を喪失しても、その人間性は失われず、その根本的価値は変わらない。「弱く、もろく、傷つきやすいものに対して、強くて障害のない私たちがケアを提供するというのは、十分な理解ではない」「むしろ認知症の人たちとのコミュニケーションがとれず、彼らを理解することは難しい。そういう私たち、自分たちがどのように人間として十分な姿でいられるのかを、傾聴とかかわりの中に努めて私たちは彼らから学んでいかなければならない」と述べています。
キッドウッドは認知症の方の声にならない心理的ニーズを共感と想像力によって把握しようとしました。そのキッドウッドの死と前後するように、認知症の人自身による貴重な内容報告が出版されました。オーストラリアの科学官僚であったクリスティーン・ボーデンさんの『私は誰になっていくの』です。45歳でアルツハイマー病の診断を受けたクリスティーンは、クリスチャンとしての信仰と科学者としての分析的な目を持って、彼女の置かれた困難な状況について述べました。そしてキッドウッドの提唱する心理療法が認知症ケアに活用できることを説きました。
パーソンセンタードケアを基本として認知症の方の声を聴きながら共にケアを考える時代を今迎えています。
2001年認知症介護研修センターは全国に3箇所(東京都杉並区、愛知県大府市、宮城県仙台市)に設置されました。認知症の介護研究事業として認知症の人のためのケアマネジメントセンター方式が開発され、パーソンセンタードケアの基本・利用者中心のケアを介護現場に具現化するためのツールとして今使われ始めています。センター方式は認知症の人のニーズを聴き取ることや介護職だけでなくチームケアの視点から、本人や家族も参加して24時間の暮らしを支えることなどの特徴があります。(目次に戻る)
□A:認知症の人にとっても、食べることは大きな楽しみの1つです。栄養のバランスも大切ですが、本人の好きなものを食べてもらうのが基本です。食べるときの雰囲気も大切にしましょう。味覚の障害も出てきます。極端に甘くしたりしょっぱくしたりしますので注意しましょう。
認知症の程度ににもよりますが、軽度の時は、その人が美味しく食べていた頃の習慣に合わせるのが1番です。好きな料理は何か、晩酌をしていたか、家族と一緒に食べるのが好きか、1人で自分のペースで食べるのが好きかなど、その人の好みの食事スタイルに近づけるように工夫しましょう。
認知症が少し進むと、食べることへのこだわりが強くなり、「何を食べるか」よりも、「すぐに何か食べたい」と言う欲求を優先しなければならないことがあります。また、目に入ったものを次々と食べてしまい食事の仕方が乱れるようになります。この場合でも好きなものを食べやすいように並べ、食欲をそそる匂いや、心地良い音に囲まれる雰囲気づくりを心がけましょう。冷蔵庫の中は整理整頓し、なまの物を口に入れない工夫も必要です。異常に過食になった場合は、食事の量を控えめにし、おむすびやサンドイッチ等さり気なく用意しておくなどすると良いでしょう。
もう1つ気をつけてほしいものは、食べることをせかさないことです。ゆっくり自分のペースで食べられるように配慮して下さい。部屋の照明は料理がはっきり見える程度に、暗くもなく明るすぎることもないようにし、食べやすい硬さ(柔らかさ)、大きさに調理し使い慣れた食器に彩りよく盛りつけるなどの工夫が必要です。
お酒は一時的に認知機能を低下させ、混乱の原因になりますので、認知症が進んだ場合は控えたほうが良いでしょう。アルコール依存症にならないように注意が必要です。認知症がさらに進むと、食べることを忘れたり、何を食べているか分からなかったり、箸で食べることが難しくなって手づかみで食べようとしたりします。
これは認識や行為の機能が低下したためなので、練習しても以前のように箸を使えるようになりません。箸が使えないなら、スプーンに替えてみるとよいでしょう。また、食べられないものまで口に入れる危険がありますので、見守りが必要です。手づかみで食べるようになると、手がご飯だらけになったり、口の周りやテーブルが汚れることが多くなりますので介助が欠かせなくなくなります。
だからといってもすべてを介助するのでなく、その人にできること、できないことを見分けながら励ましたり、できないところだけ支えるようにしましょう。介助する場合もせかせたり、食べ物を無理に口に押し込んだりしないで下さい。よく噛んでゴックンとで飲み込んだことを確認してから次の食事を介助しましょう。よく頬の内側に食物がたまってしまうことがあります。舌を動かしながら咀嚼することが難しくなり、唾液の分泌量も少なくなり、飲み込むことが困難になります。食事と食事の間に汁ものを飲ませましょう。
さらに食事で忘れてはならないのは、脱水の予防です。認知症がかなり重度でない限り、口から水分が摂れなくなることはありません。
いずれにしても、口あたりの良い物、消化の良い物を選んで食べてもらうようにします。また、箸やスプーンが使えなくなった場合は、手で食べられるサイズの大きさ(おにぎりサンドイッチなど)にしておくことも必要です。エプロンをして衣服の汚れを防止する工夫もしましょう。さらに認知症が進むと嚥下しにくくなります。その場合トロミ等をつけます。市販でトロミをつけるものを購入することが出きます。さじで測って入れますが、濃度に注意しましょう。しばらく時間がたってしまうと固まって嚥下しにくくなりますので加減に注意しましょう。すぐに溶け手軽に使うことができます。
認知症の人にとって栄養バランスは大切ですが、好きなものを楽しく、十分に食べることを優先すべきでしょう。(目次に戻る)
A:間違い行動は適応行動です。認知症になっても、人間らしい心は保たれています。認知障害のために理解することができないのです。うまく表現できなくても、また、簡単な道具の使い方が分からなくても、何とかしようという気持ちを持ち、適応しようと行動します。
対応の原則は、間違った言動があってもまず受け入れてみましょう。注意したり叱責することはかえって逆効果になります。間違った行動の原因がどこにあるのか探して見ましょう。いくつかの例を通して考えてみましょう。
◎Aさんは時々トイレの場所が分からず、ドアの近くや他の利用者さんのドアを開けて放尿します。
→トイレの場所わからないため、尿意のシグナルを早くキャッチしてトイレにお連れします。トイレの場所を忘れてしまうのでいくら教えてもいつも同じことの繰り返しです。わからないのであればできないところ支援すればよいのです。しかし夜間頻尿は大変です。ご家族のご苦労が分かります。
◎Bさんはトイレの場所が分からずゴミバケツに排尿します。
→ついついゴミバケツを片付けがちになりますが、安心してそこに排尿するのなら、床に放尿され、その尿で滑って転倒のリスクをおうよりは、ゴミバケツにビニール袋をいれておき、万が一間違いをしたときに備えておいたほうがいいです。尿誘導のタイミングがずれてしまった場合トイレにお連れできなかった我々が申し訳ないという気持ちで接するのと、「どうしてこんなところに排尿するの」と、叱責するよりは本人は安心します。
◎Cさんは夜中に目が覚めておなかがすいたようで台所に入り食べ物を探します。流しにこびりついていた茶殻を口の中にぱっと入れ食べてしまいました。
→きちんと掃除をしなかった我々の責任です。ホットミルクを飲んでいただき入眠をうながしてみます。
これらの例のようにできない部分、認知症の障害のために間違った行動をしてもそこをさりげなくフォローしてあげるとお互いにメリットが出ると考えてみてはどうででしょうか。何で叱られているのか認知症の人はわかりませんし、あの人は私のにとって嫌な人、怖い人、というイメージだけが残り信頼関係やコミュニケーションが取れなくなり逆効果になってしまいます。
水道をひねっても止めることができない方、トイレに入っても手を洗う場所がわからず、便器の中で手を洗っている方、トイレで排泄した排便の後始末ができずトイレットペーパーを流せずゴミ箱に捨てる方、自宅でガスはつけることはできても消すことができなかった方。間違った行動の原因を探り本人の気持ちになって考えて見ましょう。(目次に戻る)
A:認知症の方も私たちと同様に身体的、精神的、環境的な原因から食欲が低下することがあります。認知症の人はその理由を話してくれませんので、家族や我々職員は原因を推測する必要があります。
認知症の人も食欲がなくなることがあります。自分から食べたくないということもありますが、食欲がなくなったことを家族に伝えられず、食事量が少なく、好きなものさえ食べないといった変化に家族が気付いても、その理由が分からないことは少なくありません。その場合、なぜ食べないのか理由を推測しなければなりませんが、家族だけでは理由を見つけられないことも多く、医師の診察を受ける必要が出てくるかもしれません。
認知症の人が食事をしない理由はさまざまです。
●身体的原因
義歯が合わない(入れ歯)。口内炎や歯周病で 口の中が痛い。お腹が張って吐き気があるまでもよおす頑固な便秘、身体がだるくなる発熱、飲み込みが悪くなる食道や胃の癌。脳血管性認知症やアルツハイマー病などからくる嚥下障害(咀嚼や飲み込みが困難になる障害)服用している薬の副作用など。
●精神的原因
気持ちが落ち込んで食欲がなくなるうつ状態、漠然とした不安感、食べ物に毒が入っているといった妄想、十分に目が覚めていない軽い意識障害など。抗不安薬、抗うつ薬などを服用することで、改善が期待できるかもしれません。
●環境的原因
好みに合わない食事、身体を動かすことが少ない生活、騒がしかったり、不快なにおいがする居室、落ち着いて食べられない雰囲気など。心地よい匂いや音などに囲まれた環境で食事ができるようにし、落ち着いて食べられる雰囲気をつくります。
いずれにしても、認知症の人が食べない理由は、さまざまな原因がからんでいます。なぜ食べないのか色々な角度から理解しておく必要があります。
認知症の人が食べないことによる最も難しい問題の1つとして、アルツハイマー病が重度になると、食べ物を飲み込めなくなってしまうことがあります。このような状態になったら病気の終末期と見なして、口以外からの方法(点滴や経管栄養)で栄養補給することも考えなければなりません。
施設に入居されてまもなく食欲がなくなり、食べていただくのに大変苦労した方がおられました。往診時相談すると、「もしかしてリズム不整を改善する薬の副作用ではないかな」という診断から、リズム不整を改善する薬を中止したら食欲が元に戻った方がおられました。この方は、心臓のバイパス手術を10年くらい前にされており、ずっと飲み続けていた薬が原因でした。(医療連携をとっている医師は循環器を専門にしている先生)その時、薬の副作用の怖さを実感しました。(目次に戻る)
A:入院時の公費負担制度はありませんが、経済的問題全般について社会資源概略の情報は提供ができます。それらは以下のことです。
1.高額療養費の返還制度
2.65歳以上の方を対象とした自治体独自の公費負担医療
3.65歳以上で重度身体障害者手帳保持者・障害手帳保持者や寝たきり状態になった場合などに適応される老人保健法に基づく老人医療制度
4.所得保障としての障害基礎年金、各種手当
5.生命保険にある高度障害を対象とした障害寄付金
これらのうち医療保険以外の年金保証。医療保険としての生命保険。各自治体による各種手当制度は、障害の程度との関連を問われることが多いものです。障害の程度は精神保健福祉法による障害者手帳制度に等級表を揚げていますが、基本的に「日常生活において支障をきたす」程度とはいかなる状態なのかが問われます。
国立精神・神経センター武蔵野病院ソーシャルワーカー長竹教夫氏は、単に「物理的」に食べることができるという基準で「食事が取れる」と判断されるものではない。仮にBさんが 単身アパートで生活したことを想像し、食事が食べることがどうかという「社会的な意味」で食事ができるかどうかを判断基準としているとの事です。
このように、各種診断書作成時には、自身の社会生活能力をも反映して記載することが大切でありますが、各種診断書作成要領にも詳細に記載されていないことが多いようです。したがって担当医から、渡された診断書に認知症の状態がより実際に即して表現できているかどうかを確認することも必要な場合もあります。(目次に戻る)
A:一般的に、基礎疾患がなく、食欲もあり栄養状態が良い高齢者は、年齢と共に病原体に対する免疫力が低下してきます。風邪など引いても症状が出ない場合があります。いつもとなんとなく違った言動が見られた場合は要注意です。健康な人なら問題にならないような咳や鼻水、頭痛なども要注意です。このような感染症状ではなく、食欲不振、意欲低下、脱水症状、せん妄症状などが表れることもあります。注意深く観察してください。
注意を要す感染を起こす部位として、口腔、扁桃腺、気管支、肺、腹膜、腎臓、膀胱、尿道、皮膚、筋肉など全身に見られます。この中でよく見られるのは気管支炎や肺炎などの呼吸器感染症と膀胱炎や尿道炎等の尿路感染症です。
肺炎は、元気な若年者では何の問題もない弱毒菌といわれ、皮膚、口腔、咽頭、大腸などに常在している菌ですが、高齢者が誤嚥することによって起こることがあります。
また、高齢者の尿路感染症は発熱や痛み、残尿感の訴え、発熱などの典型的な症状が乏しいことがあります。排尿回数が増えたり、また非尿時の表情が曇っていたりするときは要注意です。わずかな変化も逃さず見ていきましょう。 (目次に戻る)
A:認知症の方とのコミュニケーションのポイントは、“優しい心地よい場”でその人らしさが発揮されます。認知症の方は感情面がとっても豊かです。分からなくなったりできなくなったことで不安が一杯です。そういう気持ちを理解したり認知症という病気を理解するように努めると、コミュニケーションがうまくできるようになってきます。
コミュニケーションがうまく取れると、あたたかく、希望に満ちた気持ちになります。うまく取れなければ、とげとげしい嫌な気分になります。失敗を責められたり、叱られたり、乱暴な言葉や態度を投げかけられると、脳がそれらの恐怖から自分を守ろうとします。そのために攻撃的になったり、拒否的になったりして、コミュニケーションがうまく取れなくなってしまいます。
ですから、優しく肯定的にコミュニケーションをとる必要があります。同じことを何回も聞いてきても初めて聞いたように対応しましょう。根気が必要ですし 時には演技力も必要です。そこから生まれる場の雰囲気によって、認知症の人はいきいきと失敗を恐れず活動することができるのです。できなくなったことをさり気なくできるように支援したり、分からなくなったことをそのまま放置せず分かるように工夫をしたり納得がいくように話をしていきましょう。
★コミュニケーションのポイント★
1.選択肢を用いて質問しましょう。
「どんな食べ物が好きですか?」より「魚と肉のどちらがお好きですか?」
2.介護者の感情を率直に表現しましょう。ほめ言葉を多く使いましょう。
「その服とってもお似合いですね」「お手伝いしていただいて有難う。とっても助かりました」
3.何か行動に移すときはまずはお手本を示してから、会話しましょう。
こちらに腰掛けてと言いながら座ってみせます。
4.常に笑顔で表情豊かに会話しましょう。
5.短い言葉でゆっくりと、くどいと理解ができません。頼みごとは一つずつ
6.2つの動作を同時にやることができません。
みそ汁の具を包丁でカットしながら、だし汁をとる、等
7.話をしていることが理解できないようでしたら、別な表現を使って見ましょう。
8.大声を出す人が苦手です。席を移動していただいたり、別の場所へ誘い共に興味を引くものをやったり、感情の高ぶりを鎮めましょう。
9.ざわざわしていることが苦手な人もいます。言われていることが騒がしさのため聞こえづらく不安が一層募ります。
10.プライドやプライバシーは守りましょう。
11.本人の前で、失敗や愚痴を第三者に言わないようにしましょう。
12.本人と視線を合わせてゆっくりと喋りましょう。重度の認知症の方はタッチすることで安心します。
13.本人より前に介護者が挨拶や質問に答えないようにしましょう。じっくり待つことも大切です。
14.言葉で表現できない場合はシグナルを早めにキャッチし、声を掛けましょう。
「Q55 認知症の人とのコミュニケーションどうとったらいいですか?」
の過去記事も参照してください!(目次に戻る)
A:私はよく認知症の人と家族の会のコールセンターでこのような質問を受けたとき、こう答えるようにしています。「メモが、とっても役立ちます。できれば本人のプライドを傷つけないように事前に今までの経緯をメモに書きとってください。そしてそのメモを事前に渡してください。認知症と家族が気づき始めたころ、本人が忘れっぽくなって困ったと言ったときは、家族が困っていること、日常生活に支障が出ていることを過去をさかのぼってできるだけ思い出し詳細に記入してください。そして、そのメモは介護保険の調査のときも役に立ちます」と、伝えています。
【受診に際して準備しておくとよいもの】
飲み物やメモ用紙を準備しておきましょう。
受診では通常の準備に加え心理テストを受けることによる本人の大変さも考慮しましょう。
・お薬手帳
・かかりりつけ医からの紹介状
・本人が普段使っているめがね、補聴器
・飲み物(待ち時間が長いとき)
・本人の状態の変化や生活状況を書いたメモ
・メモ用紙と筆記用具
【時系列で経過を記入したメモは診察に役立ちます】
どんな医師でも診察の限られた時間にその患者さんの全てを知ることはできません。そのためそれまでの経過を記録したメモがありますと大変診察に役立ちます。診察前にそのメモを外来看護師や受付に渡し、診察の前に医師に渡しておけば、その人の状態に合わして、言葉掛けや質問ができます。患者さんにも負担が少なく、スムーズな診察ができます。(目次に戻る)
A:認知症の本・三宅貴夫医師によると認知症の診断基準には、世界保健機構(WHO)によるものとアメリカ精神医学会の「精神障害の診断基準」(DSM-Ⅳ)によるものがあります。
日本では後者が広く使われ、a.物忘れがあるb.失行、失認、失語、実行機能障害のいずれかがあるc.aとbのために生活に支障をきたすd.aとbの原因として脳の病気があるか、あると推測できるe.意識ははっきりしている。aからeの基準を全て満たす状態を認知症としています。
基本的症状である「物忘れは」は健康なお年寄りにもよく見られますが、それと認知症の大きな違いは、失行、失認、失語、実行機能障害のどれかがあるということだそうです。聞きなれない言葉ですね。失行や失認、失語、実行機能障害について学んでみましょう。
*失行:手足の運動や感覚に麻痺がないのに、目的にかなった行動ができにくい状態を言います。例えば、普段から使っていたハサミが使えなくなったり、衣類を前後反対に着たりします。
*失認:目の前にあるものが何のためのものであるか認識できにくい状態です。そのためノートを冷蔵庫に入れたり、花を食べてしまったりします。
*失語:言葉が出にくい、理解しにくい、または両方の状態です。固有名詞が出てこない、話せても相手の言っていることが理解できない、などが起こります。
*実行機能障害:計画、段取り、対策が取れなくなることです。軽度の認知症など認知症のほとんどの人に現れ、料理を作ろうと思っても段取りよく作れなかったり、出かけて道に迷ったときに周辺の様子を判断したり、記憶を頼りに目的地に着くことができなかったりします。
健康なお年寄りは、物忘れがあっても自分なりに状況判断や注意ができ、一人で生活することが可能ですが、認知症になるとそれが難しくなり、徐々に症状が進行することが多くあります。(目次に戻る)
A:あなたが不安になる気持ちはよく分かります。しかし、一番苦しんでいるのはお母さんです。何度も聞いてくるのは、忘れることによって迷惑をかけたくないため、娘さんを頼りにしているからこそ何度も聞いてくるのです。お母様のひとつひとつの行動に目をむけていると、ちぐはぐな言動が気になるかもしれませんが、それは認知症という病気かもしれません。気になるようでしたら一緒に病院に行くなどして検査してもらいましょう。早期発見、早期治療(サロンや老人会、デイサービス等利用)が本人にとって最も大切なことです。きっと義姉さんも気にしていることでしょう。良い関係を維持するためにも、本人になりかわって真剣に対策を考えてみましょう。
お母様の身になって考えてみましょう。あまり小言をいうと娘さんを嫌いになり病院に行くことさえ拒むようになってきます。日々の何でもない行動に目を見張り、いちいち口を出され、あれこれ指示を出されると、心のゆとりがなくなり余計不安で一杯になり緊張感がエスカレートしてきます。あまり小言ばかり言うと義姉さんにとっても、嫌な感情が残ってしまい、自分が攻められている気持ちになってしまうかもしれません。むしろ義姉さんをねぎらう言葉を掛けましょう。「最近同じことを何回も言うようになって、義姉さんも大変ですね。いま、不安ながらも落ち着いて生活できているのも義姉さんのおかげです。感謝しています」等と、ねぎらいの言葉を掛けることによって良い関係ができてきます。
今のお母様の最も良い対応方法は心の安定が保たれるように関わることが最も大切です。寄り添うケアです。認知症という病気を理解しながら関わっていると、多少日常生活にちぐはぐが出ても、できているそのことを褒められるようになってきます。悪化した状態を想像して不安にさせるのではなく、本人の言葉や表情から、いかにして穏かに不安なく過ごさせてあげれるかを考えてあげましょう。24時間一緒に生活しているのは義姉です。少しでも休息を取れる配慮が必要です。自由な時間をとっていただけるよう娘さんも取り組んでみてはいかがでしょうか。(目次に戻る)
A:多くの職種やスタッフが関わる介護ではお互いに伝える努力が必要です。家族が「おや?」と思うことを率直に言い合える関係が理想です。家族から相談をなげかけられたら、その場だけの対応をしてしまうと良い関係が作れません。これらは認知症の本人に快適な日常生活をおくってほしいからです。疑問に思ったら勇気を出して後回しにせずに、小さなことでもよいので率直に話し合いをしましょう。また、ずっと通院しているのに医師から脳血管性の認知症なのかアルツハイマー型認知症なのか説明を受けていなかったり、受けた説明が難しくて分からないままにしている、といった家族もいます。「おや?」「なんだか・・・」という気持ちが解消されなければ、医師や医療機関を変えてみてはいかがでしょうか。
率直に希望や都合を伝え、話し合う努力をしましょう。受けた説明がよく分からなければ、分からないと伝えましょう。説明を受けてしばらくたってから、「あのことはどうだろう?」と思うことはたくさんあります。そのときは次の機会や待てなければ問い合わせてもいいでしょう。また、サービス利用に際しては自分達の希望や都合をきちんと伝えましょう。介護はさまざまな職種の人たちに介護のパートナーとしてお世話になります。よりよい介護を行なうためには是非話し合う機会を多くもって下さい。
認知症の人と家族の会の会員さんからのコメントでは、妻が特養に入所している今は、介護の主なパートナーは介護スタッフの方々です。「車椅子に乗せるので手伝ってくださ~い!」と、協力をお願いしています。そのほかにも私がいないときでも車椅子に乗せてほしい。妻のそばを通りかかったら声を掛けてください、とお願いしています。家族の中には「世話をしてもらっているのだから、そんなこと言えない」という人がいます。しかし、一番大切なことは、本人が日々快適に、楽しく暮らせることです。そのために家族もスタッフも協力し合って介護していくべきだと思います。と、その通りだと思います。疑問に思ったり、嫌な思いをされたら、話し合いましょう。それが本人中心のケア、パーソンセンタードケアの原点なのです。
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A:薬の副作用で尿量が増えたりするときがあります。また、日中あまりトイレへ行かず尿の色が薄い場合、毒素を排泄させるため夜間、尿量が増えてきます。おしっこは腎臓で作られます。他の病気があると、昼間はそちらの方(患っている臓器)に血液が回ります。昼間腎臓が働いていなければ夜間働き、夜間尿量が多く排泄されるようになります。また男性は前立腺肥大症に罹患しやすく尿道を、栗の実大の前立腺が左右から圧迫するため、尿意があっても尿の出が細く残尿感が残り何回もトイレ通いします。膀胱炎になってしまったときも尿意が頻回になります。痛みを訴えることができない方もおります。泌尿器科の医師にご相談ください。
認知症の人は病気の進行に伴って、排泄を失敗することが増えてきます。病気が軽いときは時々下着を汚す程度ですが、そのうち尿意があってもトイレの場所を探しているうちに間に合わなくなって部屋のゴミ箱などトイレ以外のところを汚すようになってきます。さらに進行すると排泄自体分からなくなり、常にオムツが必要な状態になります。
そうならないために、本人にあった排泄シグナルさえつかんでいれば尿意で不安にさせることはありません。一生懸命、できない部分だけさりげなくフォロー(尊厳を守りながら)していくと良いコミュニケーションが取れるようになり、信頼関係が生まれます。
汚れた下着をタンスなどに隠したり、紙パンツを洗濯したりする方がいます。恥ずかしい、失敗を知られたくないという気持ちが本能的に働くのです。けして叱ったりさせず、くさい臭いの原因を本人のいないとき探してみましょう。自室のポータブルトイレの排便をわざわざ紙にくるんでゴミ箱に捨てる方もおられます。感染にだけ注意しましょう。目くじら立ててその行為を叱っても本人は理解できません。嫌な介護者のイメージしか残りませんので注意しましょう。ゴミ箱に器用に、床も汚さず排尿される方もいます。ゴミ箱内の袋の排泄物をトイレに流し、きれいに感染対策に則り処理しましょう。(水1㍑ーに対してキャップ1杯のハイターを噴霧し毎日作り換える)むしろ床に放尿されるより、オシッコで滑って骨折される方が怖いのです。ただしその前にシグナルが必ずあるはずです。「そろそろトイレに誘導する時間かな」と思いながら、個人個人の排泄パターンを把握しておきましょう。
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□A:認知症には介護の環境やケアと治療が認知症の三要素です。1つでも欠けると、本人はできなくなった自分に混乱し、努力が始まってきます。混乱した状態をBPSD(精神運動興奮)といいます。認知症を正しく理解し適切に対応すれば、ご本人も家族も明るく穏やかに暮らすことができます。
【「単なる物忘れ」と「認知症」はどうちがう?】
歳をとると誰でも忘れっぽくなりますが、例えば食べたメニューを思い出させないことはしょっちゅう私はあります。特に、2日前3日前の昼食や夕食などのメニューはよけい思い出せません。これは単なる物忘れです。意識して食事のメニューを覚えると忘れなくなります。しかし、食べたこと自体忘れてしまい食事の要求を何回もするようになると認知症の疑いがあります。
【「認知症」って、どんな病気?】
認知症とは、「脳や身体の病気が原因で、記憶・判断力などの障害がおこり、普通の社会生活が困難になる状態」をいいますが、いくつかのタイプがあります。
◎アルツハイマー型認知症
脳の神経細胞にアミロイドベーターというたんぱく質が細胞に沈着することで脳の神経細胞が減って脳が萎縮してしまい、症状が出るタイプ
◎脳血管性認知症
脳の血管が詰まったり破れたりして、その部分の脳の働きが悪くなるために症状が出るタイプ
◎アルツハイマー型認知症+脳血管性認知症
どちらか先に発症し合併してしまうタイプ
◎その他の認知症
レビー小体型認知症(大脳皮質にレビー小体がたまってしまう)、前頭側頭葉型認知症(ピック病)前頭葉と側頭葉の血流が障害されて症状が出現)アルコール性の認知症など。なお脳腫瘍やビタミン不足などによる病気で認知症の症状がみられることがあります。この場合原因となる病気を治療すれば、治る、あるいは症状が軽くなることがあります。これらを見分けるためにも、早めにかかりつけ医に相談したり、かかりつけ医から専門医に紹介状を書いてもらうことをお奨めします。
アルツハイマー型認知症は、早めに適切な対応をすれば、認知症の進行が緩やかになることがあります。早期発見、早期治療が最も大切なのです。認知症の進行を緩やかにすることができるお薬・アリセプトがあります。アルツハイマー型認知症の薬は病気の進行の程度によっての飲む量が違うので、軽い吐き気や食欲不振、便が柔らかくなる、活発になりすぎるなどの症状がみられたり、いつもと違う状態が続く場合は、主治医に相談してください。いま、メマンチン、レミニール、リバスタッチ(貼り薬)等の新薬も処方されるようになってきました。
【ワンポイントアドバイス】
より良い介護で適切な治療・ケアを行うと
・表情が良くなり、挨拶も出きるようになる。
・意欲が見られるようになる。
・落ち着いてくる。
言ったことや聞いたことを覚えていないので何度も同じことを言いますが、初めて聞いたように対応するといいですよ。食べたことを忘れるようなら、お茶でも飲んで待っててね、とか少量のおやつを出すとか小盛りにしておかわりに応じるなど工夫してみましょう。また、間違った行動を否定したり怒ったりすると嫌な感情だけが残り言ったその人が嫌いになります。否定文句は禁句です。一度にいろいろなことが同時にすることができません。本人が出きるようにアイディアやヒントを出し、自分で出きるように支援してあげましょう。そうすることによって、できなくなった自分に自信がついて穏やかになってきます。(目次に戻る)
A:「時々おかしい」のは認知症の始まりです。認知症は、早期発見、早期治療が大切です。しかし、周辺症状が強く出ない段階では家族はおかしいと気付いているのに、医師は見落としてしまうことが多々あります。しっかりと日ごろのおかしな言動の様子をメモなどに残し、それを医師に伝えましょう。(センター方式の24時間シートは時間軸で認知症の本人の混乱している様子がわかるシートとなっています)
【質問形式の評価スケール検査が重要!CTやMRIはその後でも】
いま、かかりつけ医認知症対応力向上研修を終了した医師が増えています。かかりつけ医から早期発見につながるケースが増えています。長谷川式認知症スケール・HDS-Rや知的機能検査(NMスケール・N式老年用精神状態尺度、MMSE・ミニメンタルステイト検査)を実施する医師が増えることを期待しています。特に知的検査(NMスケール)を行なわない医師は、「年のせいです」と答えがちです。これではようやく医者に診察してもらおうと本人を連れてきた家族は救われません。医師の前ではかなりしっかりと質問に答えらる認知症の方が多いのです。しかし家族は日々の生活の異変に気付きおかしいから診察につれてくるのですから、知的検査くらいはかかりつけ医が実施してほしいものです。
【「軽度認知障害」が注目されています】
診断技術が進歩する中で、「軽度認知症障害」という言葉が使われるようになってきました。認知症の予防との関連で注目されています。
(認知症の正しい知識・NHK厚生文化事業団より)
*認知症ではありません
軽度認知障害は認知症ではありません。しかし、まったく健康な状態でもありません。認知症になる前の段階、つまり、健康な状態と認知症の間の段階とお考えください。「老化に伴う物忘れ」よりは記憶障害は進んでいますが、それ以外の脳の機能は保たれおり、日常生活は何の問題もなく送れています。
*何もしないと半数が認知症に
認知症の前段階と言っても、軽度認知症障害の人が、将来、必ず、認知症になるとは限りません。そのまま治療を受けなくても、半数は認知症にならないと言われています。しかし、逆に言えば何もしなければ半数の人が認知症になるか可能性があるのです。
最近の研究では軽度認知障害の人が適切な治療を受ければ、認知症の発症を防げたり発症を遅らせたりできることがわかってきています。早期診断で軽度認知障害が発見できれば一生、認知症にならなくてもすむかもしれないのです。早めに専門の医師に相談することの大切さをあらためてご理解いただけるかと思います。
*対処法
趣味を楽しんだり人と話したりして、脳を活性化することが有効だといわれています。また、食生活の改善や運動不足の解消など、ライフスタイルを見直すことも大切です。場合によっては脳の代謝をよくする薬やアルツハイマー病の治療薬を使うこともあります。(目次に戻る)
A:認知症が進んでいるお母様は尿意があっても排尿をする場所がわかりません。失敗したからといって頭ごなしに責め、大声で騒ぐとますます混乱し失敗が多くなります。行動の「なぜ」を知るようにしましょう。
【認知症の人の気持ち】
・「トイレの場所がわからなくなっちゃた」「我慢できないので丁度いいゴミ箱があったの。お尻もすっぽり入るし良かった。そそしなくてすんだよ」
・「ちょっとそこの川ぷしまで行って用を済ませてきたの」
・「ここでやっていけなかったの?」
・「私ちゃんとトイレで用を足したはずなんだけど」
・「知らない内にしてしまったみたい、ごめんよ」
・「私そんな所で用を足した覚えはありません。人の部屋で誰がそそしたのよ、全く汚いわねー」
【こんな対処を工夫してはどうでしょうか】
・まずどの位の間隔でトイレに行っているのか、できれば24時間チェックしてみてください。(無理なようでしたら自分たちが寝るまでの間)
・尿の色や濁り、血液が混じっていないかもチェックしましょう。膀胱炎などの場合もあります。高齢になると膀胱括約筋も緩んできます。
・トイレを失敗すると叱られないようにとそそした尿を服やパンツなどで拭いてタンスなどに隠そうとします。本人は羞恥心を感じていますし自尊心も傷ついています。叱ることは逆効果になります。「年をとれば誰にでもあることだから、まして認知症という病気なのだから」と優しく話しかけましょう。その尿で滑って転倒したら大変です。速やかに片付けきれいに掃除しましょう。たびたびですと家族が叱責するする気持ちはわかりますが、「ごめんね、もっと早く気づいてあげればよかったね」と思う気持ちが大切なのです。
・トイレの場所がわからない場合は紙に「ご不浄」「便所」「トイレ」「お手洗い」などと昔使っていた表現で書いて貼るのも効果があります。
・また、夜間はトイレの電気をつけたままにしておいたり、トイレのドアを開けておくようにしましょう。その灯りをたよりにトイレにたどり着ける場合があります。
・トイレの排泄パターンを把握したら時間ごとに尿誘導してみましょう。洋式トイレなら尿が出なくてもしばらく座っていると腹圧がかかり尿が出る場合があります。和式の場合は高齢になると膝関節が痛む場合がありますのでポータブルトイレを購入し、利用してみましょう。
・放尿してしまった床はペットボトル1ℓにハイターキャップ1杯の溶液を作り拭きましょう。排便や嘔吐物が床についてしまった場合も感染予防に効果があります。溶液は作りおきはできません。24時間たったら破棄しましょう。
「Q27 尿失禁を見つけたときどうしたらいいの?」
の過去記事も参照してください!(目次に戻る)
A:今はバスなどの交通手段も減ってきていますので買い物に行くにも不便と感じている家族は、ついついずるずると運転を続けさせています。また、認知症の人は自分が病気であるという自覚が欠けている人が多いので、何で車の運転を中止しなければならないのか納得がいかず、運転をやめれない方が多いのです。人身事故を起こしてからはでは遅いので、認知症と診断した医師の力を借りましょう。
道路交通法の改正で、認知症と診断された人の運転は禁止になっています。診断した医師にも法律に主旨を徹底させる義務が課せられていますので、医師から、認知症の人が運転することがいかに危険か、説明してもらいましょう。
病名を知らせないまま運転だけを禁止してもうまくいきません。医師から病名と病状を説明してもらい、病気についての理解を深めながら、運転を諦めるようにしむけていくほうが、遠回りのようにみえても近道です。しかし、認知症が進行した状態で受診をした場合、とても納得していただくには難しい場面が多くなり、家族を困らせます。
認知症の人と家族の会のコールセンターの相談ケースにもこのような方が多くいます。医師から「車の運転は禁止」という内容の診断書を書いてもらい本人が運転したいと言ったとき、その診断書を見せて再確認させてみましょう。このQ&Aからでも 認知症の早期発見がとっても重要なことがわかります。
Q5「危険だから車の運転をやめるように言っても聞きません。どうしたらいいの? 」
の過去記事も参照してください!(目次に戻る)
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