A:ピック病はまれな認知症です。多くの点で他の認知症と共通するところもありますが、重要な相違がいくつかあります。前頭側頭型認知症とも言います。アルツハイマー病のように脳全体が萎縮するわけではなく側頭葉や前頭葉に限局して萎縮していく病気です。
ピック病は多くはアルツハイマー病よりも早く40~50歳代に発症します。実態はまだ良く分かっていません。アルツハイマー病患者の1/10程度と言われていますが、正確な罹患率は知られておりません。
症状に特徴があります。初期には、記憶力低下や生活障害は軽く、この時点で認知症と見なされないことが多くあります。その一方で人格の変化が見られます。人が変わったような奇妙な行動を繰り返します。万引きをするとか平気で破廉恥な行動をすることがあります。誰彼かまわず、性的な行為に及ぶようなこともあります。物事に無頓着でだらしがなくなり無精な生活を続けたりします。
人から注意されたり叱られたりしても耳を傾けることが少なく、自分勝手でわが道を行くといった行動になります。深く物事を考えず、悩んだりする様子もありません。その他、決まりごとにこだわることも特徴です。(決まった道しか通らない、決まったものしか食べないなど)
あまりにも異常な行動が続く時期は、一時的に精神科医療施設に入院して、対症療法的な治療が必要な場合があります。
病気が進行すると、言葉の意味が分からなくなり、例えば、カレーライスとかみそ汁といった名詞さえも分からなくなります。動作についての記憶は保たれ,失見当識もないので電車やバスなどに乗ることができ、迷子になるようなこともありません。長年にもわたってこうした症状が持続しますが、やがて認知症が進行し無言、無動、そして寝たきり状態になります。発病してから十数年以上の経過をたどります。
もう1つの特徴として、自分の言いたい事を表現できなくなることがあります。これは左前頭葉に言語を喋るのに重要な部分(ブローカー領域)の障害によって生じます。
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